研究課題/領域番号 |
19K07914
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
廣瀬 享 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 講師 (30457395)
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研究分担者 |
越智 経浩 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 助教 (30617840)
小野 正文 東京女子医科大学, 東京女子医科大学東医療センター内科(消化器内科), 准教授 (70304681)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 肝臓学 |
研究実績の概要 |
これまで我々は、NASH患者および動物モデルの肝臓でRAGE発現が亢進し、RAGE欠損マウスではNASHの肝線維化進展が抑制されることを報告し、AGE-RAGE系がNASH病態進展に重要な役割を果たしていることを明らかにしてきた。しかし、その分子メカニズムなどの詳細については充分な解明がなされていない。そこで、肝線維化シグナル伝達およびAGE-RAGE系シグナル伝達の活性化状態、さらには両シグナルのクロストークについて検討を行った。mDia1 (Mannmalian diaph 1)は、細胞骨格に関連する蛋白であり、RAGEに対しての膜結合蛋白である。コントロール食ではWTマウスと比べRAGE KOマウスにおいてRNAの発現量は低下していた。さらにMCD食負荷によりWTマウスではRNA発現量は上昇するのに対して、RAGE KOマウスではMCD食によるRNA発現量は変化せず、WTマウスと比べ有意に発現量は低値となった。また肝組織中のmDia1の蛋白発現についてウエスタンブロット法および免疫染色で評価したところ、RNAの発現量と同様に蛋白の発現量も低値であった。また線維化に関連するシグナル伝達において、mDia1の下流に存在するEGR-1、ERK、AKTのリン酸化について評価した。コントロール食ではWTマウスとRAGE KOマウス間に差を認めなかった。MCD食負荷ではWTマウスでは有意にリン酸化が進むのに対して、RAGE KOマウスでは変化を認めなかった。さらに、マウス肝において、RAGEとmDia1は肝組織において同じ部位に局在しており、それぞれαSMAとの免疫二重染色で共局在している。上記に示すとおり、NASHの肝線維化進展には、RAGEからmDia1, EGR1, ERK, AKTを介したシグナル伝達経路が重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NASH病態および肝線維化進展において重要な役割を果たしているRAGEの、肝臓内における発現調整について本研究期間内で解析を行う予定である。マウスNASH肝ではRAGEが高発現しており、AT1受容体拮抗薬(ARB)により発現が抑制され、RAGE遺伝子発現がRAS系によりregulationされている可能性を示唆する結果であった(未発表データ)。このため、本年度はMCD食誘発NASHモデルマウスを用いて、NASH進展に伴った肝内のRAS系活性化について検討を行うように計画していた。前述のように、RAGEの下流に存在するmDia1の肝臓におけるRNA発現量および蛋白の発現量を評価し、NASHの肝線維化進展には、RAGEからmDia1, EGR1, ERK, AKTを介したシグナル伝達経路が重要であることが明らかになった。本年度の予定としては、概ね良好な進捗であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
肝組織上に発現されているRAGEは膜貫通型のfull length RAGE(fRAGE)で、NASHの肝線維化進展に伴い蛋白の発現が増加する。またそれと同時に遺伝子発現も増加していることから(未発表データ)、膜貫通型RAGE(fRAGE)のみならず、分泌型であるsoluble RAGEも増加していることが推定される。このため、NASHマウス血清を用いてsoluble RAGEを測定したところ、NASH肝線維化が進展したマウスにおいてはsoluble RAGEも同様に増加していることが明らかになった。このため、sRAGE、esRAGEの発現量と肝線維化程度との関連について、NASHモデルマウスおよびNASH患者において検討を進めて行く。
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次年度使用額が生じた理由 |
肝組織におけるRAGE遺伝子および蛋白発現、血清sRAGE、esRAGEの発現量と肝線維化程度との関連について、NASHモデルマウスおよびNASH患者において検討するため、多くのマウスと試料代、解析のための試薬を必要とする。また、肝臓などでのサイトカインや線維化関連、細胞内シグナル伝達物質関連を評価する目的にて、Real-time RT PCR法、Western blot、肝組織における免疫組織学的検討などの評価を行うため、その材料費などに多くの経費を必要とする。 また、これら一連の研究にて得られた成果を国内のみならず、海外の学会、学術集会にて発表する必要があるため、その旅費も申請額が必要であると考えられる。
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