研究課題/領域番号 |
19K07916
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
木村 成志 大分大学, 医学部, 准教授 (30433048)
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研究分担者 |
麻生 泰弘 大分大学, 医学部, 助教 (80555194) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 全身性慢性炎症 / 大脳白質病変 / Neuro-vascular unit / 炎症性サイトカイン |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,健常高齢者を対象として3.0T-MRI,FDG-PET,アミロイドPETなどの先端脳画像検査および血液バイオマーカー解析を実施し,全身性慢性炎症とNeuro-vascular unitの破綻,脳内アミロイド蓄積,脳糖代謝低下,脳萎縮,大脳白質変性の関連を明らかにすることである.2020年は,血液検体を用いた関連分子の測定と統計解析を行うことを計画していた.しかし,健常高齢者のリクルートに時間を要したため,計画がやや遅れいている.現在,健康高齢者および軽度認知障害におけるPIB-PET,FDG-PET,MRI等の画像解析は完了した.軽度認知症における研究を先行して行っておりその成果を報告した.①大脳白質病変を伴う軽度認知障害者では,大脳白質病変を伴わない軽度認知障害者と比較してmatrix metalloproteinases (MMPs)-2,8,9が高値,tissue inhibitor of metalloproteinases(TIMP)-1,2が低値であり,Fazekas分類による大脳白質病変の重症度スコアがMMP-2,8,9と正の相関,TIMP-1,2と負の相関を認めた(Curr Alzheimer Res. 2020;17(6):547-555.).この結果からNeuro-vascular unitの破綻やAβの分解に関与するMMPとTIMP-2, MMP-8/TIMP-1,が,ADにおける大脳白質病変の重症度マーカーとなる可能性が示唆された.②軽度認知障害を対象としたインスリン受容体の感受性の改善,動脈硬化抑制,抗炎症等の作用を有するアディポネクチンとPIB-PET,FDG-PETの関連では,脳脊髄液中のアディポネクチンは,頭頂側頭葉と後部帯状回の脳糖代謝量と関連を認めた(Curr Alzheimer Res. 2020;).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大分県臼杵市におけるコホート研究から健常高齢者をリクルートし,70例のMRI,PIB-PET,FDG-PET等の画像データと血液検体を集積した.このコホートデータを用いた臨床研究を論文化した(PLoS One. 2020 Dec 14;15(12):e0243910. d).また,健常高齢者70例の脳内アミロイド蓄積量,脳糖代謝量,大脳皮質体積,大脳白質病変等の画像解析を完了した.現在,multiplex immunoassay systemによる血漿中の炎症性サイトカインとneurovascular unit(NVU)障害マーカーの測定を行っている.健常高齢者のリクルートに時間を要したことや研究協力者の異動による人員不足から計画はやや遅れている.しかし,軽度認知障害を対象とした研究は順調に進行しており,NVU障害マーカーであるMMP-2/TIMP-2, MMP-8/TIMP-1,MMP-9/TIMP-1とADにおける大脳白質病変の関連を明らかにした(Association between Matrix Metalloproteinases, Their Tissue Inhibitor and White Matter Lesions in Mild Cognitive Impairment. Curr Alzheimer Res. 2020;17(6):547-555.).さらに,炎症に関与するアディポネクチンと脳糖代謝量と関連を明らかにした(Association of Cerebrospinal Fluid Adiponectin Levels With Cerebral Glucose Metabolism In Mild Cognitive Impairment: A Pilot Study. Curr Alzheimer Res. 2020;).
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今後の研究の推進方策 |
研究協力者の異動により計画が遅れているが,今年度中には健常高齢者における血漿中の炎症性サイトカインとneurovascular unit(NVU)障害マーカーの測定を完了する.これにより、炎症性サイトカインおよび NVU 障害マーカーと脳内アミロイド蓄積量,脳糖代謝量,大脳皮質体積,大脳白質病変とneurovascular unit障害マーカー関連を重回帰分析とStatistical parametric mapping (SPM8)を用いて検討する.軽度認知障害と同様に炎症性サイトカインおよび NVU 障害マーカーとアルツハイマー病の病態との関連が明らかとなれば論文化する.
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