研究課題/領域番号 |
19K07922
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研究機関 | 文京学院大学 |
研究代表者 |
飯島 史朗 文京学院大学, 保健医療技術学部, 教授 (30222798)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 骨融解 / 糖鎖 / エクソソーム |
研究実績の概要 |
多発性骨髄腫の様々な合併症発症には、骨髄腫細胞から分泌されるエクソソームの関与が強く疑われるものの、そのメカニズムは不明である。本研究は、多発性骨髄腫の骨融解病変発症機序解明のため、エクソソームの量的および質的評価を行うことを目的とした。2019年度は、多発性骨髄腫の増悪因子、腫瘍転移因子となり得るサイトカインで骨髄腫細胞株を刺激し、発現するエクソソーム表面および細胞表面の糖鎖解析を行ってサイトカイン刺激で増加・減少する分子を探索した。 ヒト多発性骨髄腫細胞株4種を無血清培地で培養し、IL-6で刺激した。培養上清からエクソソームを回収し、エクソソームの表面糖鎖および細胞表面糖鎖をレクチンブロット法で解析した。無刺激の細胞とIL-6刺激を行った細胞について糖鎖のレクチンへの反応性を比較した結果、8種のレクチンに対する反応性がエクソソーム表面および細胞表面で共に認められた。また、フコースを認識するレクチンはエクソソーム表面に反応が認められなかった。このことから、エクソソーム表面にはフコースが存在せず、セレクチン以外の経路で細胞内に取り込まれることが示唆された。 次に、IL-6刺激で分泌されるエクソソームの糖鎖変化を検討した結果、IL-6の濃度上昇に伴いエクソソーム糖鎖と各レクチンとの反応が減少し、IL-6刺激による糖鎖量減少を見出した。糖鎖量は刺激後2日目に最小となり、その後徐々に回復したが7日後でも無刺激の糖鎖量までは回復しなかった。一種の細胞株由来のエクソソームはIL-6刺激により多くのレクチンとの反応性が低下したが、Con Aなど反応性が維持されるレクチンもあった。しかし、他の細胞株ではすべてのレクチンとの反応が低下するなど、サイトカイン刺激への応答については、細胞間での一定の傾向は見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞間接着への関与が明らかな糖鎖について、エクソソームのターゲティングに着目して解析を行っている。 2019年度は、骨髄腫細胞を増殖または抑制する各種サイトカイン等で刺激したときの、エクソソーム分泌数、表面糖鎖、内包タンパクにつて、miRNAの変化について実施予定であった。このうち、年度末の新型コロナウイルス影響で、骨髄腫を抑制する因子での刺激およびmiRNAの分析についてが、実施できていないが、おおむね計画通り実施できている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画としては、昨年度実施できなかった骨髄腫細胞株へ抑制性のサイトカインで刺激および、エクソソームの糖鎖、タンパク、miRNA、を実施する。 この他に、エクソソームと標的細胞の共培養による検討を行い、骨融解病変の発症メカニズムについて解析する。これは、破骨前駆細胞に、骨髄腫細胞を様々なサイトカイン刺激で得られたエクソソームを作用させ、破骨細胞への分化について検討する。破骨細胞への分化は、多核化をギムザ染色、マーカー酵素である酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ染色で確認する。同時に、エクソソームをAlexaなどで蛍光標識し、破骨前駆細胞内へエクソソーム取り込みについて蛍光顕微鏡で確認する。また、エクソソームの取り込み量については、細胞を溶解し、蛍光プレートリーダーで定量化する。対照として破骨細胞への分化誘導因子であるRANKLとG-CSFによって破骨細胞を誘導し比較する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度末に実施予定であった、miRNA実験が、新型コロナウイルスの影響で実施できないた状況であった。このため、試薬の保存期間を考え、この研究のための試薬一式について購入を控えたためである。 本年度速やかに購入し、本年文と合わせて執行する予定である。
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