研究課題/領域番号 |
19K07922
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研究機関 | 文京学院大学 |
研究代表者 |
飯島 史朗 文京学院大学, 保健医療技術学部, 教授 (30222798)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | エクソソーム / ILー6 / IL-27 / 糖鎖 / シアル酸 |
研究実績の概要 |
多発性骨髄腫(MM)は、様々な治療薬が開発されるものの未だ予後不良の疾患である。IL-6はMMの増悪因子として知られており、IL-27はMMを抑制する因子として報告されている。また、糖鎖は細胞接着に、エクソソームはやがんの転移に関与することが知られている。本研究では、MMの病態形成に関与するサイトカインでMM細胞を刺激し、細胞表面糖鎖、エクソソーム糖鎖・内包タンパク質について解析を行い、新たなMMのバイオマーカーを目指している。 方法は、ヒト多発性骨髄腫細胞株2種を無血清培地で培養し、IL-6およびIL-27で刺激した。培養上清からエクソソームを回収し、分泌されるエクソソーム数とエクソソーム内包タンパク質を2次元電気泳動法、結合している糖鎖はレクチンを用いて分析した。 2次元電気泳動法でエクソソーム含有タンパク質を細胞株間で比較した。この細胞で検討した結果、両細胞株ともにIL-6で刺激した場合、pI 6の50 kDa付近と30 kDa付近、IL-27ではpI 7付近の25kDa付近、pI 9付近のバンドが増加し、異なるサイトカイン刺激、エクソソーム内包タンパク質の変化が見られた。一方、糖鎖の解析では、IL-6でMM細胞を刺激後反応性が変化したレクチンは、シアル酸(Sia)を認識するSSA、Gal/GalNAcを認識するECAとの反応性が増加し、一方、IL-27刺激後に変化したレクチンは、Gal/GalNAcを認識するPHA-E4レクチン、GlcNAcを認識するDSAおよびSSAレクチンとの反応性が低下し、MM細胞表面で異なるサイトカイン刺激で糖鎖に変化が認められた。 これまでの研究で、フコースを除き、エクソソーム表面糖鎖とMM細胞表面糖鎖ではIL-6刺激で同様の変化が見られることを明らかとしている。今後、IL-27刺激でのエクソソーム糖鎖の解析を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
エクソソームの糖鎖、内包タンパクを解析し、MMの病態解析を目標に行っており、糖鎖、内包タンパクの解析については、ほぼ終了している。しかし、エクソソーム表面糖鎖が転移に関与している点、エクソソーム内包物質か合併用形成に関与している点については、十分な解析ができていない。これは、研究協力者等が新型コロナ感染症により、行動制限を受けているため、研究計画がやや遅れている
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今後の研究の推進方策 |
これまでの検討で、サイトカイン刺激についてIL-6については十分に解析が進んでいるが、IL-27については一部しか進んでいないため、重点的に解析を進める。また、エクソソームと標的細胞の共培養による検討を行い、骨融解病変の発症機序について解析する。このために、骨髄腫細胞を様々なサイトカイン刺激して得られたエクソソームを破骨前駆細胞に作用させ、破骨細胞への分化について検討する。この際に、各サイトカインで変化が認められる糖鎖を修飾しエクソソームの取り込みについて検討する。これらの検討により。エクソソームの糖鎖等のMMのバイオマーカーとしての有用性を明らかとしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症により、研究協力者等、予定していた研究活動が実施できなかった。 次年度は、遅延をとりもどずべく、研究居力者に順する研究者を増員し対応する。
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