研究実績の概要 |
多発性骨髄腫(multiple myeloma; MM)の診断等には、侵襲性が高い検査が必要であることから、新たなバイオマーカーの開発が期待されている。本研究では、腫瘍の転移に関わるエクソソームおよび糖鎖をターゲットとしたMMの新たなバイオマーカー開発を試みている。 ヒト骨髄腫細胞株(RPMI8226)をMMの増悪因子IL-6または抑制因子IL-27で刺激し、刺激前後の培養上清から、超遠心法によりエクソソームを、アフィニテークロマトグラフィーによりM蛋白を回収した。エクソソームまたは細胞表面に結合している糖鎖、およびM蛋白結合糖鎖は、21種のレクチンを用いて、フローサイトメトリー法、レクチンブロット法により解析した。また、エクソソーム内包蛋白は2次元電気泳動法および質量分析法で解析した。 エクソソーム内包蛋白の2次元電気泳動法では、IL-6刺激により3つのスポット[スポットは、スポットA (pI 9.3, MW 50 kDa)、スポットB (pI 9.2, MW 42 kDa)、スポットC (pI 9.2, MW 34 kDa)]が増加した。これらのスポットを質量分析後MASCOT解析した結果、スポットAはATP synthase subunitα,mitochondria、スポットBはEF1A1 (Elongation factor1-α1)、スポットCはG3P (Glyceraldehyde 3-phosplate dehydrogenase)と同定し、これらの蛋白は、MMの増悪に関与し、MMの新たなマーカーとなり得ると予想した。また、糖鎖の解析では、IL-6刺激により、同じMM細胞から分泌されるエクソソームとM蛋白で変化した糖鎖が異なったことより、これらが異なるマーカーになる可能性を示唆した。
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