研究課題/領域番号 |
19K07924
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
水嶋 章郎 順天堂大学, 医学部, 教授 (80229690)
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研究分担者 |
水嶋 しのぶ 順天堂大学, 医学部, 助手 (50327798)
山口 琢児 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (50816741)
奥野 滋子 順天堂大学, 医学部, 客員准教授 (80317370)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ストレス / 唾液 / オキシトシン / コルチゾール / メラトニン / sIgA / 日内変動 / 在宅勤務 |
研究実績の概要 |
新型コロナウィルスの感染拡大を契機に、人々の働き方は大きく変わり在宅勤務を導入する動きが広がっている。新型コロナウィルスと共存・共生する「ウィズコロナ時代」における勤務形態の急激な変化が、勤務者の心身へどのような影響をもたらすのか、全人的ケアの立場からストレス状態の客観的な評価を行う必要がある。そこで我々は、非侵襲的なストレス定量化として唾液バイオマーカーの日内変動に及ぼす影響を比較検討した。 対象者は、在宅勤務9名(男性2名、女性7名,37.1±2.6歳)、通常勤務7名(男性3名、女性4名、37.3±3.0歳)の16名とした。唾液は2020年5月~6月に1日4回(起床後、昼食前、夕食前、就寝前)、1週間で3回(月、水、金曜日)採取した。得られた唾液は測定まで-20℃で保存した。唾液成分はCortisol, Melatonin, s-IgA, OxytocinをELISAにより解析した。 Cortisolはいずれの群においても起床時に高く夜に向けて低くなる日内変動を示し、変調はみられなかった。Melatoninは夜にむけて分泌量が増えるという日内変動を示す。在宅勤務群においては起床時に高く、夜に向けて低くなるという変調がみられた。通常勤務群に日内変動の変調はみられなかった。s-IgAはいずれの群においても起床時が高くそれ以降は低くなる日内変動を示し、変調はみられなかった。Oxytocinは在宅勤務が高い値を示した。 これらの結果から在宅勤務においては通勤等による移動がなく、人との接触の機会が少なくなることで感染による不安が少なくなったことなどから強いストレスは感じていないことが示唆された。しかしながら、在宅勤務においてはMelatoninの日内変動の変調が示され、これは終日家にいることでこれまでの生活リズムの変化によりサーカディアンリズムが変調をきたしていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おりしも新型コロナ感染症の蔓延で、在宅勤務など生活習慣の変化を余儀なくされた。そこで、新しく在宅勤務形態となった被験者に、唾液中Cortisol、Melatonin,、s-IgA、Oxytocin等のストレス成分および抗ストレス成分解析を行い、一定の変化を見いだした。これまでの生活リズムの変化によりサーカディアンリズムが変調をきたしていることが示唆された。これらの所見は、園芸作業時と対比しうる、新たな通常状態の変化の類推に寄与すると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
園芸作業や花卉とのふれあいで事例数を増やすべく、学内の倫理委員会の承認を得た。園芸作業の諸条件に合わせたストレス緩和効果を継続して測定する準備は整っている。新型コロナ感染症に伴う行動制限が解除された後、追加の園芸作業に関するフィールドワークを開始していく。 先行実証により確認した唾液中コルチゾール、クロモグラニンA等のストレス成分、オキシトシン等の抗ストレス成分解析と自律神経、気分アンケート(POMS2)を用いたストレスの計測方法を適用し、ここにウェアラブルデバイス(Tシャツ型バイタルセンサー)による自律神経の計測技術を適用する。唾液中ストレス成分の変化と自律神経の相関性を抽出し、効果的な指標群を作成する。ウエアラブルデバイス(Tシャツ型バイタルセンサー)については計測実用性を高めるべく、解析確実性、着心地等の所感についても関連企業との情報交換を行う。 また、特に企業労働者向けの運用をシュミレーションし、この条件に基づいた園芸体験プログラムの模擬実践とストレス計測の実施を行う。医学的な実証デー タを蓄積し、科学的エビデンスに基づいて医農連携によるストレスケアについて検証する。併せて、新たな医福農連携領域としての都市ストレスの緩和概念を提 唱し、身体的、精神的困難を緩和する全人的緩和ケアアプローチを「アグリヒーリング」という集学的な位相に結論付ける。
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