研究課題
ストレスは職場や家庭などの環境を問わず発生し、現代を生きる人々はstress-filled societyで生活している。年齢や性別を問わず、人々はストレスをコントロールしながら自らの生活を充実させなければならない。また、新型コロナウイルスの感染拡大に生活は大きく変化した。これまで農作業における健康効果は、園芸療法やグリーンディスプレイの設置など限られた場面での検証はされてきたが、適切な環境での農作業がいかに人間の心身に影響を及ぼすのかという点での科学的な検証枠組みの構築やエビデンスの収集は行われていない状況である。今回、農作業の健康効果の基礎的なエビデンスの収集を図り、農作業のストレス軽減効果を検証した。対象者は、研究に同意の得られた同一企業に勤務する26名(男性20名、女性6名)とした。農作業体験前の勤務中、農作業体験前後、農作業体験後の勤務中、それぞれで唾液採取、気分プロファイル検査(POMS2)を行なった。唾液はコルチゾール、クロモグラニンA、sIgA、オキシトシンを測定した。農作業体験によりCortisolの減少が見られたが、有意な減少ではなかった。Chromogranin Aに変化はみられなかった。s-IgAはわずかに増加した。Oxytocinの分泌増加がみられ、Oxytocinの分泌増加は農作業体験後の勤務中でも高値を示し、持ち越し効果が観察された。単に農作物や土との「触れ合い」による効果だけではなく、一緒に作業をおこなった人たちとの一体感や協働意識の醸成等と関連していると考えられ、会社組織などコミュニティ親和の構成に役立つ可能性が示された。気分プロフィール検査により農作業体験前の勤務と比較すると農作業体験後の勤務中のネガティブ因子がいずれの項目も低下した。農作業体験からはリラクゼーション効果のみならず、 意欲増進の効果が同時に得られると期待される。
すべて 2021
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Neuroendocrinology Letters
巻: 42 ページ: 55-6055-60