研究課題
本研究では、脳アミロイド血管症のモデルマウスにて、ミクログリアの細胞表面分子・TREM2の発現レベルが病態の進展に伴い亢進することを見出してきた。また、当該モデルマウスへ経口投与した植物由来生理活性物質・タキシフォリンは、脳内アミロイドβ減少に加え、TREM2陽性ミクログリアの減少とともに脳内炎症を抑制することを明らかにしてきた。最終年度では、国立病院機構肥満症・糖尿病多施設共同研究におけるコホートを基盤に、非肥満2型糖尿病患者を対象として、血清中の可溶型TREM2(sTREM2)初期値と2年後の認知機能や臨床指標の変化量との関連を縦断的に検討した。その結果、2年後の時点でHbA1cが改善した集団においては、sTREM2初期値が高い程、2年後の腹囲、HOMA-Rが改善し、sTREM2量も減少した。一方、sTREM2初期値と認知機能の変化に有意な関連はないという結果を認めた。しかしながら、2年後の時点でHbA1cが増悪した集団においては、sTREM2初期値が高い程、認知機能が低下することが判明した。TREM2は末梢組織においては脂肪細胞からも産生されること、sTREM2はミクログリアに結合して活性化させ炎症応答を惹起することが報告されている。よって、HbA1c改善群においては、糖尿病治療による高血糖改善や内臓脂肪減少を介したsTREM2減少により脳内炎症が抑制され、認知機能低下の抑制に繋がった可能性が示唆される。HbA1c増悪群においては、高血糖やsTREM2を介した脳-脂肪連関によりミクログリアが活性化することで脳内炎症が亢進し、認知機能低下に繋がった可能性が認められた。以上より、sTREM2は糖尿病における認知機能低下の新規予知指標となる可能性が示唆され、TREM2の新たな病態意義が明らかとなった。
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