研究課題/領域番号 |
19K07929
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
船上 仁範 近畿大学, 薬学部, 准教授 (70449833)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 慢性ストレス / うつ / 海馬神経新生 / 神経分化 / RNA結合タンパク質 |
研究実績の概要 |
前年度までの成果として,慢性ストレス状態かつうつ様行動を示すSARTストレスマウスの海馬神経新生を免疫染色法により解析した結果,新生細胞数の増加が認められたにもかかわらず,神経細胞へ分化せずにそのままの状態を維持あるいは消滅している可能性が観察されており,慢性ストレスによる海馬での神経分化率の減少を示唆し,この低下が慢性ストレスによるうつ発症の要因の一つである可能性が十分に考えられた。 そこで今年度はうつや不安を惹起させる慢性ストレスが神経分化に与える影響について検討するため,神経幹細胞が神経細胞に分化することが決定づけられた神経前駆細胞に発現し,成熟したニューロンにおいても持続的に発現がみられる神経特異的RNA結合タンパク質HuBおよびHuCの発現・分布解析を行った。また,神経への分化前として神経幹細胞のマーカーであるMusashi1,神経前駆細胞のマーカーであるMASH1を,分化後として未熟神経細胞のマーカーであるDoublecortine(DCX)と共染色し,その共局在についても観察した。その結果,HuBはMusashi1,MASH1と一部共局在しており,DCXとの共局在は観察されなかった。HuCはMusashi1,MASH1,Dcxいずれにおいても共局在が観察され,顆粒球上層の成熟神経細胞においても発現が観察された。従って,HuBは神経の分化過程において神経神経幹細胞と神経神経前駆細胞で分化に,HuCは神経新生のすべての過程に関与していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で示したとおり,令和2年度の研究目的は,慢性ストレスによる海馬神経新生低下状態の詳細を検討するため,「神経分化を正に制御する神経特異的RNA結合タンパク質HuBおよびHuCの発現・分布解析」であった。 検討すべき項目に対する成果はすべて得られており,令和2年度の目的はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度,成熟海馬の神経新生において神経特異的RNA結合タンパク質HuBおよびHu-Cが段階的に関与していることを見いだした。 令和3年度はこの神経分化に関与するHuタンパク質がうつ及び不安様行動を示すSARTストレスマウスでどの様に変化するのか免疫染色法により詳細に検討する。 これらの研究について,得られた結果をとりまとめ,研究成果の発表並びに論文投稿を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響により年度末に購入予定であった試薬・実験材料が3月末日までに納品されなかったために未使用額255,203円が生じた。次年度に支払いが完了しなかった物品の支払いに充てる。
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