研究課題/領域番号 |
19K07930
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
鹿野 理子 東北大学, 医学系研究科, 大学院非常勤講師 (20344658)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 内臓痛 / 脳機能画像 / 機械学習 / 予測モデル / 過敏性腸症候群 |
研究実績の概要 |
本検討では、目に見えない”痛み体験”の首座を脳ととらえ、痛み体験時の脳活動、および慢性的に痛みを持つ個体での脳活動をもとに、痛み特異的な脳活動マーカーを作成することを目的とする。 我々はこれまでに、局所に痛みの原因が特定できないものの、慢性的な痛みをもつ機能性疼痛の患者群、過敏性腸症候群、機能性ディスペプシア、外陰部痛、とクローン病(器質性疾患)において、まったく同一のプロトコールを用いて、痛み刺激時、および痛みを持つ個体の安静時、および脳形態の国際共同研究を立ち上げた。しかしながら、検討を行った施設間、および個体間、対象群間でのデータのばらつきが大きく、共通項の抽出に問題点も多かった。近年、人工知能の機械学習アルゴリズムを脳画像解析に応用することにより、脳活動から高い再現性で痛みを予測することが可能になりつつある.この手法を用いて、個々の疾患群を特異的にy補足する脳活動パターンをモデル化できるとともに、機能性疼痛障害に共通の脳活動パターンを同定できる可能性が出ている。 本年度は、健常正常群でのデータ取得に加え、既存のデータを用いて、機械学習アルゴリズムを応用し、脳から各個人の内臓痛の痛みレベルを予測できるか、予測モデル作成のテストを行った。また、既存の患者群の静止時脳活動データより、疾患群における疾患重症度、および心理的変異を予想できる脳活動パターンを抽出可能なアルゴリズムの作成を試みた。さらに、海外の研究者とコラボレーションし、上記の機能性疾患群のほか、慢性腰痛、および線維筋痛症についても同様のプロトコールで予測モデルを作成できないか検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で最も重要な部分は、脳画像データを分析するアルゴリズムの作成と評価である。その意味で、既存データを用いて、アルゴリズムのテストを行い、ある程度の評価を行うことと、現在取得中のデータに応用すべき部分を明らかにするのは重要な工程である。アルゴリズム作成テストはおおむね順調に進展している。一方、新規データの取得、および海外共同研究者との共同プロジェクトの進展は年度末のCOVID-19の世界的感染拡大のために、一時保留せざるを得ない部分もあった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、海外共同研究者との共同作業を進め、予測精度の高い脳画像解析アルゴリズムを作成する予定である。中でも最終的な臨床応用を目指すために、どの指標を予測することが、臨床的に意義があり、有用であるかを同定する。さらに、新規データで作成アルゴリズムを用いて予測可能かどうか、作成モデルを評価していく。まずは、本検討で対象とする過敏性腸症候群のデータを用いて、内臓痛の痛みレベル予想に特異的な脳活動パターンを作成、過敏性腸症候群の特徴 である内臓知覚過敏を脳活動パターンで客観的に捉えうるか検証する.さらに過敏性腸症候群と対照群で、痛みを予測する脳活動パターン異なるか検証することを目的とする.さらに他の機能性疼痛障害患者との共通項、違いを脳活動パターンより分離できるか検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年は過去に取得したデータを用いて、機械学習を用いたアルゴリズムによる予測もでる作成のシュミレーションを行った。新奇データの取得が、遅れ気味であったため、解析用のコンピューターの購入を次年度に延期したため、謝金もふくめ次年度使用額が生じた。
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