(赤血球によるリポタンパクの修飾) HDLに強く影響を及ぼす可能性のある赤血球に着目して,赤血球による各種リポタンパクへの影響さらにはその因子を調べた.血漿を洗浄赤血球と同体積で混合し,37℃で反応させた.反応後に上清を回収し,総コレステロール(TC)濃度,遊離型コレステロール(FC)濃度を測定した.また同様に,超遠心で得られた各種リポタンパク(超低比重リポタンパク(VLDL),LDL,高比重リポタンパク(HDL))およびリポタンパク除去血清(Lipo free)を赤血球と混合した条件や,赤血球と混和前にリポ蛋白中のレシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)を阻害した条件についても同様に評価した.その結果,血漿中TC濃度は赤血球との反応48時間後に約20%(35 mg/dL)増加した.またLCATを阻害した血漿を用いると,赤血球から血漿のコレステロールの受け取り量は制限された.さらにVLDL,HDL,Lipo freeにおいては,赤血球との反応により増加したTC中のFCの割合はそれぞれ96.4%,84.3%,91.7%であったのに対し,LDLでは,増加したTC中の49.1%がECであるという予想に反する結果が得られた(赤血球膜のコレステロールの大半がFCであるため).このように,血漿中の各種リポタンパクは赤血球からコレステロールを多く受け取り,その因子としてLCATが重要であったが,エステル型コレステロールの増加の原因は不明であった.この赤血球からHDLへのコレステロールの移動を定量化する方法に関して,先行研究ではトリチウム標識コレステロールを用いていたが,蛍光コレステロールによる簡便な評価法への改良を行った.これにより,経時的な赤血球からHDLへのコレステロールの移動が観察可能となり,今後,この方法を利用して,上記の課題も含めさらに検討していく.
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