研究課題
関節リウマチなどの膠原病では、高サイトカイン血症などから動脈血管内皮細胞傷害を引き起こし、炎症疾患としての動脈硬化が健常者よりも進展すると考えられている。動脈硬化による関節リウマチ患者での心血管イベントリスクは健常者と比較して約2倍になると報告されており、平均寿命も健常者に比較して約10歳短い理由の1つと考えられている。同様に、生活習慣病の1つである2型糖尿病患者でも、心血管イベントリスクは健常者の2倍とされており、平均寿命も健常者より約10歳短い。現在臨床応用されている動脈硬化の定量的指標として、四肢血圧同時測定による心臓足首血管指数(CAVI)、頸動脈エコー検査による内膜中膜厚(IMT)やプラーク厚がある。一般に、心血管疾患発症予測には、コレステロール沈着の指標と考えられる動脈の内膜・中膜の指標であるIMT よりも、動脈壁の硬さ(ステフネス)の指標であるCAVI の方が有用であると考えらえている。我々は動脈ステフネスに注目し、頸動脈エコーでの心拍動に伴う動脈壁の動きから、動画解析によってその硬さを測定する新たな動脈硬化指標である弾性係数(E1)を開発した。呼吸の影響を除くために頸動脈長軸での8秒間のDICOMでの動画撮影(フレームレート30fps)が必要であるが、頸動脈をエコープローブでかなり強く圧迫しない限りE1への影響はなく、3名の検査技師による測定間変動係数も4.5%、5.9%、3.3%と良好であった。これまで正常者、生活習慣病や膠原病患者429名(平均年齢68±12歳、女性59.2%)のCAVI、IMT、E1の同時測定を終了し、CAVIとE1それぞれから血管年齢を算出している。CAVIとE1による糖尿病の有無および膠原病の有無での血管年齢の差を解析中である。
2: おおむね順調に進展している
月間での解析患者数がまだ目標に達していない。
1)解析患者数は順調に増えているが、オーダーする医師数を増やして月当たりの解析患者数を増加させる。2)生活習慣病では2型糖尿病、膠原病では関節リウマチに絞って血管年齢の比較を、性・年齢をマッチさせて行う。3)IMTを動脈硬化度の基準とした場合の、CAVIおよびE1との相関や信頼性の検討を行う。4)撮像した頸動脈エコー動画を深層学習させ、新たな数理モデルの作成を行う。
研究分担者に配分した30,000円×2名が未執行だったため、次年度に繰り越して使用してもらう予定である。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
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