研究実績の概要 |
これまでに700例以上の様々な疾患の患者の頸動脈US動画撮影とCAVIの同時測定を行った。頸動脈エコー動画解析から得られた動脈硬化指数E1から血管年齢を算出し、同時にCAVIから既存の報告に基づき血管年齢を算出した。すべての患者を動脈硬化のリスク因子(喫煙、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、慢性腎臓病、肥満)のうち、3つ未満の患者群(動脈硬化低リスク群)と3つ以上ある患者もしくは心血管疾患の既往がある患者群(動脈硬化高リスク群)の2群に分けて、頸動脈エコーで得られた血管年齢とCAVIから得られた血管年齢と実年齢との関係を検討した。この際、動脈硬化低リスク群での実年齢(X軸)と血管年齢(Y軸)との関係が原点を通る直線になるように、頸動脈USおよびCAVIから得られた血管年齢の補正をそれぞれ行った。すると、頸動脈エコーおよびCAVIの両方において、動脈硬化高リスク群での直線の傾きがいずれも動脈硬化低リスク群に比較して有意に急峻になった(頸動脈エコー:低リスク群y=0.966x+3.07, R2=0.249、高リスク群y=1.30x-12.8, R2=0.406;CAVI:低リスク群y=0.999x+0.399, R2=0.394、高リスク群y=1.30x-12.7, R2=0.106)。すなわち動脈硬化高リスク群では低リスク群に比較して、頸動脈USとCAVIから得らえたそれぞれの血管年齢が実年齢より高くなっていることが判明した。これらのことから、頸動脈エコーから得られた血管年齢はCAVIから得られた血管年齢とほぼ同等の有用性があると考えられた。同時に、これまで用いてきた頸動脈エコーからの血管年齢とCAVIからの血管年齢の算出式を修正する必要があることが判明した。また、頸動脈エコーとCAVIから算出された血管年齢には、多くの患者においてかなり解離があり、その臨床的な意義の解明も今後の課題である。
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