非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は脂肪肝を背景とする肝炎である。さらにBMI正常であるにもかかわらず、膵切除後や消化管術後など腸内細菌変化が起こる患者でNASHを発症する患者が存在する。NASHは、健常人と比べ糞便中の腸内細菌叢構成の違いが指摘されているが、腸管粘膜上皮により近い上皮表面のムチン層内の細菌叢の違いとその病態への影響については不明な点が多い。当研究の目的は患者の腸管粘膜上皮表面の細菌叢に疾患特有性や病勢との関連があるかを明らかにすることである。 これまでの研究で、下部消化管内視鏡による粘膜上皮表面のムチン層に存在する細菌叢の採取方法およびDNA抽出方法、シーケンスライブラリー作成方法などの条件検討を行い、NASH患者15名と非NASH患者10名づつのサンプルの集積が完了した。次世代シーケンサーを用いて、粘液表層細菌、唾液、糞便の腸内細菌解析を行い、NASH患者の粘膜表層細菌は健常者のそれとことなっていることを見だした。NASH患者および健常者ともに、同一個人でも粘液中の細菌叢構成は糞便中のものと大きく違う一方で、健常人とNASH患者ともに同一個人内では粘膜表層の細菌は回腸末端や大腸の各場所の部位によらず似通っていることを明らかとした。さらに、Picrustソフトウェアを用い、NASH患者の腸内細菌の機能を解析し、健常者と比較しアミノ酸代謝などが亢進していることを見出した。NASHの粘膜細菌を含めた腸内細菌と、病態との関連を解析し、今後のNASHの病態解明につながりうる知見がえられたと考える。
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