研究課題
本研究は、関節リウマチ(RA)のCureを実現可能とする「真の寛解」ないし「分子学的寛解」の指標となりうる新規バイオマーカーの探索と確立を目的とし遂行している。2019年度は、未治療早期RAレジストリによる臨床的検討と、関節炎と関節破壊に重要なサイトカイン、ケモカインなどの液性因子と破骨細胞分化に関する基礎的検討の両面から解析を進めた。未治療早期RAレジストリ(Three Arrow Study)は2020年3月の時点で142例の登録に至り、データベース化を進めるとともに、現在一部の治療前血清でマルチプルアッセイを用いた新規バイオマーカーのスクリーニングに着手した。一方、基礎的検討においては、RAにおける破骨細胞分化のメカニズムについて、基礎的検討を行った。その結果、RAの疾患活動性および関節破壊に対する新たなバイオマーカーとしてCXCL10が期待されることを明らかにした。また、研究者がバイオマーカーとしての可能性を報告してきた14-3-3ηについて分泌機構を解析し、14-3-3ηを高発現したマクロファージはTNF-α誘導性に細胞構造の損傷を伴うネクロトーシスを受け、その結果、細胞外へ分泌されることを明らかにした。2020年度以降は、未治療早期RAレジストリ(Three Arrow Study)については、2021年3月までに200例を目標に症例登録を引き続き症例登録を進め、並行してレントゲンによる関節破壊評価も含めた臨床データベース構築を進める。また、保存血清を用いて、14-3-3η、calprotectin、CXCL10などのバイオマーカーをマルチプルアッセイにより測定し、臨床アウトカムとの関係性から「真の寛解」ないし「分子学的寛解」の指標となりうるバイオマーカー探索を進める予定である。
2: おおむね順調に進展している
当科で進行中の未治療早期関節リウマチ(RA)レジストリ(Three Arrow Study)については、2020年3月の時点で142例の登録に至り、現在一部の治療前血清でマルチプルアッセイを用いた新規バイオマーカーのスクリーニングに着手した。一方、RAにおける破骨細胞分化のメカニズムについて、基礎的検討を行った。RAの病態に重要なサイトイカインであるTNF-αは単球上のCD80発現を誘導され、それによりCTLA-4-Igが破骨細胞の形成をより強力に抑制することで関節リウマチの骨破壊を保護することを示した。一方、CTLA-4-Igはin vitroにおいて有意にIFN-γ と CXCL10のレベルに影響し、またRA患者の血清CXCL10レベルはCTLA-4-Ig治療において治療効果を反映することを示した。TGFβ1は、NF-κBの核内移行阻害によるNFATc1の抑制を介して、ヒトRANKL誘導性破骨細胞分化を制御し、TGFβ1がRAに対する潜在的治療標的となりうることを示した。TGF-β1はまた、炎症関節においてアクチビンAの発現に関与し、さらにアクチビンAは主として抗炎症作用を発揮し、CXCL10の制御と破骨細胞形成を介する関節破壊を抑制することを示した。これらの知見から、CXCL10がRAの病態に深く関与し、RAに対する活動性制御の新たなバイオマーカーとして期待されることを明らかにした。一方、研究者がバイオマーカーとしての可能性を報告してきた14-3-3ηについて、その分泌機構を解析し、14-3-3ηを高発現したマクロファージはTNF-α誘導性に細胞構造の損傷を伴うネクロトーシスを受け、その結果、細胞外へ14-3-3ηが分泌されることを明らかにした。
未治療早期RAレジストリ(Three Arrow Study)については、2021年3月までに200例を目標に症例登録を引き続き症例登録を進め、並行して登録症例の年齢・性別・罹病期間・喫煙歴・使用薬剤(生物学的製剤・抗リウマチ薬)・合併症・疼痛関節数・腫脹関節数・患者全般評価・DAS28・CDAI・SDAI・HAQ・ESR・CRP・リウマトイド因子・抗CCP抗体、レントゲンによる関節破壊評価などのデータベース化を行う。また、保存血清を用いて、14-3-3η、calprotectin、および今回新たに見出したCXCL10を含む種々のバイオマーカーをマルチプルアッセイにより測定し、疾患活動性の推移、予後不良因子の有無、関節破壊との関係性を検討し、RAのCureを目指すため「真の寛解」ないし「分子学的寛解」の指標となりうるバイオマーカーを探索する。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Pathobiology
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