HBVが肝細胞に侵入する時,HBVがPreS1抗原と肝細胞表面に発現するNTCPとの結合を介して肝細胞に吸着し,肝細胞の中に取り込まれる.NTCPを遺伝子導入した肝細胞であるHepG2-NTCPにmiR-6126をトランスフェクションすると,NTCPの発現が抑制されることをWestern Blotと免疫染色で明らかにすることが出来た.さらに,蛍光色素で標識したPreS1抗原を用いて,PreS1抗原の肝細胞表面への吸着を評価すると,miR-6126トランスフェクション群では対照群に比べて,PreS1抗原の吸着が減弱していた.ヒト初代継代肝細胞を用いた評価でも,miR-6126はPreS1抗原の肝細胞表面への吸着を減少させていた.以上の結果から,miR-6126はHBVの肝細胞表面への吸着を抑制することが明らかとなった.これにより,miR-6126がHBVの肝細胞への感染を抑制する可能性が示唆された. 次に,miR-6126の標的遺伝子を探索した.HepG2-NTCP細胞をmiR-6126群と対照群に分けて,トランスクリプトーム解析を行い,1万種類以上の遺伝子のmRNAの発現の増減を評価した.その結果,miR-6126トランスフェクション群において対称群に比べて,25遺伝子の発現が有意に抑制されていた.しかし.この25遺伝子うちに,miR-6126の標的遺伝子は存在しなかった.NTCPそのものも,そのmRNAの3'末にmiR-6126との相補的な配列はなく,miR-6126がNTCPのmRNAに直接結合してその翻訳を抑える,とは考えにくかった.しかし,miR-6126の転写産物のintron領域に,miR-6126が結合し得る配列が22か所存在した.この配列の存在意義を明らかにすることは,時間的かつ予算的制約により不可能であった.以上の成果をMicrobiology Spectrum誌に投稿し,現在Major revisionとなっている.
|