研究実績の概要 |
<対象> 硝子体混濁のため、硝子体切除術を受けた患者のべ19名の眼内リンパ球浮遊液を作成し、CD4/CD8比、B細胞率、さらにはCD4およ びCD8陽性Tリンパ球分画におけるCD25, CD27, CD28, CD45RA, CD57, CD127, CD197, CD279の発現を6-color FCMで解析した。同一患者の手術当日の末梢血Tリン パ球についても同様の解析を行い、眼内リンパ球との分画パターンを比較した。また、眼内各種サイトカイン濃度との関連も検討した。 <結果> 1)サルコイドーシス確定例(3例)では硝子体Tリンパ球のCD4/CD8比>10であり、硝子体CD4+Tリンパ球は末梢血に比べてcentral memory T、effector memory TおよびT regの 比率が高かった。硝子体CD8+Tリンパ球については、末梢血に比べてCD45RA陰性memory T、CD279陽性Tの比率が高かった。 2)B細胞性リンパ腫(9例)では硝子体Tリンパ球は大半の症例で末梢血よりもCD4/CD8比低値、CD4 memory T比率高値、また全例でT reg比率低値であった。一方、硝子体眼内IL-10/IL-6比は平均50.9であった。IL-10/IL-6比≧1.0を基準とすると、B細胞リンパ腫の診断における感度は77.1%で あった。従来報告されている感度より低く、FCMとの組み合わせ(B細胞比率≧5%、表面免疫グロブリン軽鎖κ/λ比偏重あり)で診断することで、診断精度が向 上するものと考えられた。3) ウイルス性内眼炎(2例)では、硝子体Tリンパ球のCD4/CD8比<1.0であり、硝子体CD4+Tリンパ球およびCD8+リンパ球におけるmemory Tの比率は他の2疾患群と同様であった。なお、1例ではT reg比率>30%と全症例中で最も高値を示した。
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