研究課題
本研究では、近位尿細管上皮細胞(HK-2)を用いてメガリン発現の変動に着目した糖尿病性腎症の新規尿中バイオマーカーの探索を目的に研究を行う。昨年度までに、HK-2細胞に酸化ストレス(過酸化水素)を添加するとメガリン細胞内ドメイン(MCTF)が培養上清に分泌されること、また糖尿病ラットにおいても尿中にMCTFが排泄されることを確認した。このMCTF排泄は、メガリン発現を抑制的に制御する制御的膜内切断(RIP)に付随して起こっていると考えられる。本年度は、メガリン発現を抑制的に制御すると考えられるマイクロRNA(miRNA) miRNAを探索することを目的に、酸化ストレス負荷によるmiRNA発現の変化を観察し、その尿中バイオマーカーとしての可能性を検討した。はじめに、IgA腎症にて尿中で上昇することが報告されているメガリン制御miRNA、miRNA-148bについて検討を行った。miRNA-148bは酸化ストレス負荷により上昇する傾向にはあったが、有意差が得られなかった。また、miRNA-148bをノックダウンしてメガリン発現が上昇するか確認したところ、有意な上昇が得られなかった。そのため、その他のmiRNAがメガリン制御に大きく関与していることが考えれられた。そこで、過酸化水素を添加したHK-2において変化するmiRNAを、miRNAマイクロアレイによって網羅的に探索した。その結果、数種類のメガリン制御miRNAが上昇することが確認された。この中で特に発現量の多いmiRNAの2種類について、定量法を確立しようと試みたが、年度内には検出方法が確立できなかった。今後、これらmiRNAの定量法を確立し、尿中バイオマーカーとしての臨床応用に発展させていくつもりである。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件)
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