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2019 年度 実施状況報告書

再生アソシエイト細胞静注による認知症治療法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 19K07946
研究機関東海大学

研究代表者

今関 良子  東海大学, 医学部, 講師 (10328122)

研究分担者 永田 栄一郎  東海大学, 医学部, 教授 (00255457)
浅原 孝之  東海大学, 医学部, 教授 (20246200)
瀧澤 俊也  東海大学, 医学部, 教授 (70197234)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード再生アソシエイト細胞 / 血管性認知症 / 慢性脳虚血 / 血管内皮前駆細胞
研究実績の概要

現在、認知症の根治療法は確立されておらず、今後、高齢化社会となる本邦において、認知症治療法の開発は、患者や家族の負担軽減のみならず、国家財政の観点からも急務である。本研究の目的は、動物(マウス)モデルを使い、認知症治療法を確立することにある。我々は、既存の血管内皮前駆細胞(EPC)とは異なる質的・量的に優れた分化能をもつEPCを安全かつ効率的に投与する培養手法を確立した。これまでの研究で用いられたEPCとは異なり、この新規の培養法を用いて、コロニー定量化によるEPC分化動態及び血管再生・修復能の高い細胞を選び出すことに成功した。ここで得られた質的・量的に優れたEPCを含む血管再生効果・抗炎症効果・免疫寛容効果に優れた細胞群(再生アソシエイト細胞regeneration associate cells: RACs)投与の至適投与条件を動物実験で確立することは、我々のみが成し得る独創的研究である。これまでに、C57B/6J成熟10週齢雌・雄または40週齢雌を用い、マウス慢性脳虚血(血管性認知症)モデルを作成し、マウス尾静脈からのRACs(またはControl群:PBS溶液0.1ml)静注を行った。10週齢雌マウスN=36(対照群=19、RACs群=17)において、RACs群の方が対照群よりも有意差を持って、空間作業認知が優れている結果が得られた。一方、マウス雌40週齢N=16(対照群=7、RACs群=9)及び 10週齢雄マウスN=26(対照群=12、RACs群=14)においては、明らかな差異は得られなかった。この結果より、RACsの至適投与回数及び投与タイミング等、更なる検討が必要と考えている。さらに、血管性認知症モデルマウスにおいて、RACsの有効性が確立できた後に、次段階として、アルツハイマー型モデルマウスへの応用も視野に入れ、最終的には、人への臨床応用を目指している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまでに、C57B/6J成熟10週齢雌・雄または40週齢雌を用い、マウス慢性脳虚血モデルを作成し、モデル作成翌日にマウス尾静脈からのRACs(またはControl群:PBS溶液0.1ml)静注を行った。RACsは、同種マウス(別個体)脾臓より分離・培養し、行動学習については、術後28日目に、Y Maze Test を用いて評価した。10週齢雌マウスN=36(対照群=19、RACs群=17)において、RACs群の方が対照群よりも有意差を持って、空間作業認知が優れている結果が得られた。一方、マウス雌40週齢N=16(対照群=7、RACs群=9)及び 10週齢雄マウスN=26(対照群=12、RACs群=14)においては、明らかな差異は得られなかった。今後、加齢や雌雄によるホルモンの差異等の検討や至適投与回数及び投与タイミングの検討が必要と思われる。

今後の研究の推進方策

RACs静注の行動評価(作業空間認知改善効果)の雌雄及びAgingでの差異については、雌雄及びAgingでのホルモンの差異、すなわち、エストロゲンが関与したと推測している。エストロゲンは、女性付属器(卵巣)のみならず、脳内でも産生されており、記憶学習と関連することが知られている。エストロゲンと空間作業認知の関連を調べた既報告では、エストロゲンを作れないマウスでは空間作業認知能力が低いこと示されている。 特に、雄では脳血流が20-30%減少すると、アストロサイトの膨張及び神経細胞突起が萎縮し、空間作業認知能力や短期学習能力が低下するとされるが、雌では、この現象は起きず、エストロゲンが血管拡張作用等を持ち、血流低下を抑えると共に、エストロゲン投与で神経細胞突起の萎縮も減少すると報告されている。また空間作業認知は、これまで主に、前頭皮質及び前頭皮質に関連したネットワークの関与のみが論じられてきたが、歯状回-海馬回路も重要な役割を果たしていることが分かってきた。雄またはエストロゲンの低下したAgingマウスの空間作業認知改善には、RACs単回静注投与ではなく、複数回静注投与やエストロゲン投与との併用等を検討する必要があるのではないかと考えている。現在、10週齢雄マウスにおいて、RACs複数回静注投与実験を遂行中である。今後、更なる病態機序の解明を行っていくために、RACs投与回数の至適化、エストロゲン動態の検討、サイトカインの測定、海馬を含めた組織・免疫学的方法での検討が必要であると考えている。更には、アルツハイマー型認知症マウスモデル(SAMP8)での検証も行っていく予定である。

次年度使用額が生じた理由

COVID-19蔓延の影響で、動物実験の一部が遅延し、参加予定の日本脳卒中学会開催が3月から8月へ延期された。このため、動物実験費用(モデル動物費用:約2万円)、日本脳卒中学会参加費(2万円)及び交通費(約1000円)を2020年度に計上する計画である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2019

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] マウス慢性脳虚血モデルにおける再生アソシエイト細胞静注療法の行動学習評価及び組織学的検討2019

    • 著者名/発表者名
      今関 良子
    • 学会等名
      第10回日本脳血管・認知症学会総会
  • [学会発表] マウス脳血管性認知症モデルにおける 再生アソシエイト細胞静注療法の効果について2019

    • 著者名/発表者名
      今関 良子
    • 学会等名
      第38回日本日本認知症学会

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公開日: 2021-01-27  

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