研究課題/領域番号 |
19K07948
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
野村 昌作 関西医科大学, 医学部, 教授 (20218358)
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研究分担者 |
伊藤 量基 関西医科大学, 医学部, 准教授 (70434826)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ITP / EV / サイトカイン遺伝子 / 樹状細胞 / SNP |
研究実績の概要 |
免疫性血小板減少症(ITP)では、ステロイドを中心とした治療薬の適正な使用が、その後の臨床経過を左右しているが、難治性のITPに関する対策は未だ完全ではない。本研究では、これら難治性のITPを早期に診断して適切な治療ストラテジーを構築するために、Extracellular vesicle (EV)とサイトカイン遺伝子の一塩基多型(SNP)解析を組み合わせた早期診断システムの開発を行うことを目的としている。本年度の研究では、まずExosome・Ectosome・Apoptic Bodyの3種類のEVの構造解析を行った。大部分のEVは、フォスファチジルセリン(PS)を含むが、リンパ球機能分子抗原の発現はごく軽度であった。EVにおけるインテグリンの発現は低値群・高値群の2群に分類され、PSの発現との間に乖離が認められた。EVによる標的細胞のICAM-1発現のメカニズムには、PKCとMAPKの関与が証明された。次に、ITP症例からのDNA抽出を行い、シーケンスに特有のプローブを含むOneLamda社のキットによるPCR-SSP方法を使用して、サイトカイン遺伝子多型を決定した。なおサイトカイン関連遺伝子としては、1.TNFα(-308)*G/A 2.IL-6(-174)*G/C 3.IL-10 (-1082)*G/A、(-819)*C/T、(-592)*C/A 4.IFNγ(+874)*T/A 5.TGFβ(コドン10,25) の5つを対象とした。測定の結果、ITPでは、IL-10遺伝子ハプロタイプの頻度としてATA/ATAが54.4%を占めており、nonATA/ATAに比較して血小板数が有意に低下していることが判明した。以上の結果より、ITPの病態にはサイトカイン遺伝子多型が関与している事が明確となり、今後の本研究の遂行に伴う治療の反応性とEVに関するデータを組み込むことによって、難治性ITPの早期診断および適切な治療ストラテジーの構築に結びつく可能性が高いことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ITPでは、抗血小板抗体の生成および抗体の結合した血小板の破壊のメカニズムにおいて単球・マクロファージの活性化が重要な役割を果たしている。したがって、本研究においても単球・マクロファージ系の培養細胞であるTHP-1を用いた研究がメインテーマの一つになっている。活性化したTHP-1からのEVの構造解析は順調に進んでいるが、EVが巨核球や血管内皮細胞に対してどのようなメカニズムでシグナルを伝達しているかの検討がやや遅れている。おそらく、反応させる温度と培養液中のカルシウム濃度が重要なポイントではないかと考えて、今その基礎実験を追加しているところである。一方、ITP症例のサイトカイン遺伝子多型の検討は当初の計画よりもはるかに順調に進行しており、令和2年度の前半には目標症例を達成できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
進捗状況で述べたように、ITP症例のサイトカイン遺伝子多型の検討は順調に進んでいる。令和2年度には、なるべく早い時期にEVの構造解析およびITPにおける標的細胞の検討を終えて、EVの樹状細胞(DC)免疫誘導ならびにサイトカイン産生の研究につなげたいと考えている。そのために、計画を前倒しにして、EVの構造解析およびITPにおける標的細胞の検討と並行して、EVの樹状細胞(DC)免疫誘導ならびにサイトカイン産生の研究を予定よりも早くスタートさせたいと考えている。すなわち、純化した2種類のヒトDC亜群と3種類のEVを組み合わせて、それぞれを培養し、各DC亜群の成熟活性化度合いに関してCD40,CD40L, CD80, CD86, CD83の発現をフローサイトメーターで解析したいと考えている。また、ITP患者の治療経過に基づく患者の層別解析も並行して実施したいと考えている。
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