研究課題
最終年度は、抗EPX抗体の存在を視覚的に確認するために、好酸球性ムチンの病理標本を用いて免疫染色の至適化に取り組んだ。独自に作成したリコンビナントEPXとbiotinの結合物を用いて、適切な抗原賦活化を行った標本と反応させることでEPX抗体を視覚的にも捉えることができた。また、好酸球とムチンの共培養の系を立ち上げ、好酸球のムチン粘稠度に及ぼす影響を検討した。高濃度の好酸球と共培養した際にはムチンの溶解は著明に抑制された。一方で低濃度の好酸球と共培養した際には逆に溶解が促進される現象がみられ、低濃度EPXによる効果と一致した。これは、低濃度EPXによるEPX-IgG抗体の中和およびDNase Ⅰ活性の亢進による効果であることが推測された。最終的に、血清EPX-IgG抗体の病勢マーカーとしての有用性の検証も行った。興味深いことに血清EPX-IgG値は副鼻腔CTスコアと正の相関関係を示した。低濃度EPXによるムチン溶解効果と併せて鑑みると、好酸球性ムチン中に存在するEPX-IgGがムチン形成に関与していることが示唆された。また、喘息を合併する難治性好酸球性副鼻腔炎に対して生物学的製剤による治療を行った症例を対象として、治療前後で血清IgG値の変動を検討した。結果として、治療後には有意に血清EPX-IgG値が下がることを確認することができ、病勢把握および治療効果の判定マーカーとしての有用性が期待される。
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Biomedicines
巻: 9 ページ: 787
10.3390/biomedicines9070787