研究課題
本研究では、『胸部大動脈瘤の形成過程に、血管平滑筋細胞における細胞内鉄取り込み受容体 トランスフェリン受容体1が関与する』との仮説を立て、血管平滑筋細胞特異的トランスフェリン受容体1遺伝子ノックアウトマウスを作成し、胸部大動脈瘤におけるトランスフェリン受容体1の役割の解析を行う計画を立てた。血管平滑筋細胞特異的トランスフェリン受容体1遺伝子ヘテロノックアウトマウスは、野生型マウスと比べ血圧、血管構造に大きな差を認めなかったが、両マウスに昇圧因子のアンジオテンシンⅡを投与したところ、その反応に相違を認めることが明らかとなった。つまり、アンジオテンシンⅡ投与後、血圧上昇の程度に差を認めなかったが、血管肥厚の程度は血管平滑筋細胞特異的トランスフェリン受容体1遺伝子ヘテロノックアウトマウスは野生型マウスに比べ減弱することが明らかになった。さらに、細胞増殖の程度にも差があることが明らかになった。また、培養血管平滑筋細胞においてアンジオテンシンⅡ負荷後の細胞増殖が観察されたが、small interfering RNAを用いた実験系にてトランスフェリン受容体1を介した細胞増殖の機序が存在することが示された。これらの結果より、胸部大動脈瘤の形成過程に、血管平滑筋細胞におけるトランスフェリン受容体1を介した機序の存在が示唆され、トランスフェリン受容体1が胸部大動脈瘤の創薬ターゲットになるかどうかを今後も検討する予定である。
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Circulation: Heart Failure
巻: 15 ページ: e009034
10.1161/CIRCHEARTFAILURE.121.009034