研究実績の概要 |
磁気微粒子は直径50~300nm程度の微粒子であり、その特性から蛋白質や核酸分子の精製等に用いられており、汎用品として多くのメーカーから市販されている。本研究では、この磁気微粒子を検出用マーカーとして用いることにより、抗原抗体反応を利用した高感度な検査システムとしての確立を目指しており、そのための技術開発・深化を行った。 今年度はその最終年度であり、実施した研究内容は以下の通りである。
1.磁気マーカーの均一化と磁気特性の最大化、抗体分子の安定的結合技術の開発:市販の磁気微粒子はその使用目的の性質上、粒子1つ1つの磁気特性が均一化しておらず、定量的検出には不向きなものである。今回我々は、粒子当たりの磁気強度が同じかつ抗体分子を結合するのに最適なカルボキシ基(-COOH)を持つ検出用微粒子を開発し、その物理特性を明らかにした。今回用いた微粒子は市販の微粒子に比べ水中安定性は2倍程度良く、磁気強度も2.5倍程度、また抗体結合能は3~5倍程度向上した。
2.検査システムの臨床評価:これまで開発してきたシステムのプロトコールを用いて、候補蛋白質(total IgE, C.albicans, Alpha-fetoprotein)の緩衝液中及び血清中の検出実験を行い、その有用性及び優位性を検討した。検出感度はtotal IgEで約0.01pg(緩衝液中)と従来の3倍の感度を得た。また付随する磁気印加システムの改良を行い、検体前処理にかかる時間を10分程度短縮することができた。
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