本研究は令和元年から令和3年まで実施した。本研究の特色は、質量分析法を利用した方法で先天代謝異常症の臨床検査法の開発と応用を行う点であった。本研究では大きく分けて原因酵素の酵素活性測定法とバイオマーカーの測定法の2つの開発を進めた。酵素活性測定については、申請者らの先行研究においてライソゾーム病の6疾患の酵素活性測定系の開発を進めてきている。本研究では、令和元年度において追加のライソゾーム病酵素としてイズロン酸-2-スルファターゼ(IDS)の酵素活性測定系を追加するアッセイ系を確立した。またバイオマーカー測定に関しては、令和元年度に副腎白質ジストロフィー(ALD)のバイオマーカー(極長鎖脂肪酸、very long chain fatty acid、VLCFA)の、令和2年度にファブリー病のバイオマーカー(LysoGb3)の測定系を検討した。以上、本研究に関しては最初の2年間で概ね順調に研究が進行してきた。本年度(令和3年度)は、これまでに確立した方法論を引き続き臨床検体や疾患モデル動物検体を測定し、測定検体数を増やした。こうして測定実績を積み重ねることで、確立した手法の誤差が一般的に考えられている臨床検査の日間誤差(15-20%程度)であることを確認した。また、これまでに得られた成果をまとめるとともに成果報告を行った。 総括として、申請時の目的はおおむね達成し、所定の成果が得られたと考えている。今後の研究の展開として酵素活性測定系についてはさらに多くの原因酵素の同時測定系の開発につながると良いと思っている。またバイオマーカー測定系については、本研究の申請時に記載したバイオマーカーに加え、近年の測定装置の高感度化に伴って、さらに病型亜型依存的なバイオマーカーの提案もされている。今後、本研究の成果がこうした新規のバイオマーカーの測定法の開発に発展してゆくことを期待している。
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