研究課題
本研究においては、1)ミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白(MOG)抗体による脱髄性疾患における病理学的特徴を明らかにし、2)抗MOG抗体陽性急性散在性脳脊髄炎(ADEM)例や多発性硬化症(MS)におけるMOGやアクアポリン4(AQP4)抗原特異的リンパ球を検討し、3)各疾患群で抗原特異的リンパ球のサイトカイン産生能を解析し、それらの免疫応答がどのように臨床病態に関連するかを明らかにすることにより、疾患促進因子の解明と新たな治療法の開発を目的としている。MOG抗体陽性例の生検組織において、病理学的には血管周囲性の著しいリンパ球浸潤や血管周囲性脱髄がありMOGの脱落を伴う脱髄性病変を特徴とすることを明らかにした。また、CD8陽性細胞の浸潤を特徴とするMSとは異なり、CD4陽性細胞浸潤が優位でありADEM類似の脱髄病変を特徴とする病理像が主体であることを明らかにした。AQP4抗体陽性視神経脊髄炎関連疾患(NMOSD)のような補体や免疫グロブリン沈着の判然としない例が多く認められ、液性免疫の関与がNMOとも異なる可能性がある。MOG抗原に対する免疫応答がMOG抗体関連疾患と他疾患でどのような違いがあるかは、脱髄性疾患における細胞性免疫応答を研究するうえで有用である。本研究においては、当院に通院中のMS, 抗AQP4抗体陽性NMO、抗MOG抗体陽性脳脊髄炎患者の末梢血より既報のごとくリンパ球を分離し、抗原の添加群と非添加群においてリンパ球の活性化をFlowcytometer法、Elispot法、細胞内サイトカインの発現等を用いて解析した。その結果、MOG抗体陽性群で一部のMOGペプチドに応答するエピトープが明らかとなり、またAQP4陽性群においても、MOGやAQP4に対する免疫応答があることが明らかとなった。引き続き、症例を蓄積して病型や病期による違いを明らかにしていく予定である
1: 当初の計画以上に進展している
本研究は、ミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白(MOG)抗体による脱髄性疾患における病理学的特徴を明らかにし、抗MOG抗体陽性急性散在性脳脊髄炎(ADEM)例や多発性硬化症(MS)におけるMOGやアクアポリン4(AQP4)抗原特異的リンパ球を検討し、各疾患群で抗原特異的リンパ球のサイトカイン産生能を解析し、それらの免疫応答がどのように臨床病態に関連するかを明らかにすることにより、疾患促進因子の解明と新たな治療法の開発を目的としている。MOG抗体陽性例の生検組織において、病理学的には血管周囲性の著しいリンパ球浸潤や血管周囲性脱髄がありMOGの脱落を伴う脱髄性病変を特徴とすることを明らかにした。補体や免疫グロブリン沈着の判然としない例が多く認められ、液性免疫の関与がNMOとも異なる可能性があるが、既に一部の剖検例では補体沈着が著しい例があり、その病態には多様性があることが示唆されており、全容解明には今後の症例の蓄積が必要である。MOG抗原に対する免疫応答がMOG抗体関連疾患と他疾患でどのような違いがあるかは、脱髄性疾患における細胞性免疫応答を研究するうえで有用である。MOG抗体陽性群で一部のMOGペプチドに応答するエピトープが明らかとなり、またAQP4抗体陽性群においても、MOGやAQP4に対する免疫応答があることが明らかとなったが、症例数がまだ少なく、引き続き症例を蓄積して病型や病期による違いを明らかにしていく予定である。
MOG抗体関連疾患は、当初考えられていたよりも病態が多様であり、その臨床病理学的特徴を明らかにするには多角的な検討が必要となっている。病理学的に血管周囲性脱髄が特徴であることが明らかになってきたが、NMOSDと比較して補体や免疫グロブリン沈着の判然としない例が多い一方で、一部の剖検例では補体沈着が著しい例があり、その病態には多様性があることが示唆されており全容解明には今後の症例の蓄積が必要である。これらの病理学的特徴は、MOG抗体がどのように脱髄病変を形成するかの根拠をなす重要な問題であり、今後のMOG抗体関連疾患の治療方針を決めていくうえでも極めて重要である。MOG抗体の関与が未だ十分には明らかにされていない中ではあるが、より細胞性免疫の関与が重要であることが示唆されており、MOG抗原に対する免疫応答がMOG抗体関連疾患と他疾患でどのような違いがあるかは、脱髄性疾患における細胞性免疫応答を制御する治療を検討するうえで重要である。MOG抗体陽性群で一部のMOGペプチドに応答するエピトープが明らかとなり、またAQP4陽性群においても、MOGやAQP4に対する免疫応答があることが明らかとなったが症例数がまだ少なく、またMSを含めた脱髄性疾患全体におけるMOG抗体および抗原特異的T細胞の関与を検討する必要があり、引き続き症例を蓄積して各MS、NMOSD、ADEMなどの病型や急性期、慢性期等の病期による細胞性免疫の関与を明らかにしていく予定である。
研究が順調に推移しているが、物品費用が充足していた分が使用できたことや予定していた出張が数件あったが、そのうちの2件は招待講演などで費用が不要となったことなど、予定予算が消化できなかった面がある。今後、研究内容として更なる症例の蓄積と追加実験のため、物品費用として消耗品の使用予定があり、次年度に繰り越して使用する予定である。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 7件、 招待講演 2件)
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