研究課題/領域番号 |
19K07954
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
鵜沢 顕之 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (10533317)
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研究分担者 |
桑原 聡 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (70282481)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 重症筋無力症 / 新規治療 / B細胞 / 融合蛋白 / 動物モデル / 自己抗体 / 自己免疫疾患 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、重症筋無力症(MG)の新たな治療薬の候補として我々が開発した融合蛋白AChR-Fcの作用機序の一つである病原性B細胞の傷害活性を生体内で証明することである。 今年度は、まず脾細胞中の病原性B細胞の検出法の確立を目指した。MGの動物モデルであるexperimental autoimmune MG(EAMG)の能動免疫モデルを、抗原であるアセチルコリン受容体(AChR)をLewisラットに免疫することで作成し、症状がピークとなる免疫後8週目にモデルラットを剖検した。EAMG群(n=6)、EAMG治療群(AChR-Fc治療群)(n=6)、コントロール群(n=6)から脾細胞を採取しフローサイトメーターでリンパ球の解析を行った。染色はビオチン化したAChR-Fc(病原性B細胞の検出マーカー:AChR抗体産生病原性B細胞の表面にはB細胞受容体としてAChR抗体が発現しているため、病原性B細胞のみに結合)、CD45R抗体(B細胞マーカー)、CD27抗体(memory B細胞マーカー)、CD38抗体(活性化胚中心B細胞マーカー)などを用い、Fc受容体をブロックした上で行った。AChR-Fc治療によって、モデル動物の重症度の改善が認められたものの、脾細胞中の病原性B細胞の数・割合はEAMG群、治療群、コントロール群で有意な差を見いだせなかった。脾臓に存在する胚中心活性化B細胞(CD45R+CD27-CD38low)は抗原免疫後、2週頃から産生され、4週をピークに増加し、その後は徐々にmemory B細胞になり、形質細胞は骨髄に移行するとされているため、症状がピークとなる8週目の脾細胞の解析では、病原性B細胞が検出できなかったと考えた。解剖の時期を早めての検討が必要と考えられ、現在再度動物モデルの作成を行っており、AChR免疫後、4週前後での脾細胞の解析を進める予定としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
軽微な遅れはあるものの、全体として研究はおおむね順調に進展していると考えている。ハイブリドーマなどを用いて、フローサイトメトリーで使用する抗体が十分に作用する濃度設定などの基礎検討は済んでおり、またEAMGにおいて症状がピークとなる免疫後8週目での解析では病原性B細胞の検出が困難であることが判明した。今後病原性B細胞検出の適正な時期の検討や他の検出方法の検討を行っていく。このまま研究が進められれば、研究期間中に十分に研究課題の遂行が可能であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、EAMGの能動免疫モデルを用いて、経時的に脾細胞中の病原性B細胞数のモニターを行い、同時にELISA法で病原性抗体であるAChR抗体価の血中濃度の測定も行うことで、両者の関連性を検討する。それらをモニターすることにより、AChR-Fcの適正な投与量・投与方法の検討へ進むことが可能である。もし、現在のフローサイトメトリー法での検出が難しいようであれば、別の方法での病原性B細胞の検出を検討する。具体的にはB細胞受容体の活性化に伴う、受容体の内在化の可能性も考え、細胞に穴をあけてからフローサイトメトリー法で検出を試みたり、末梢血や骨髄細胞での病原性B細胞の検出、脾臓組織を用いた免疫染色で病原性B細胞の検出など検討する。 最終的にはEAMGの個体数を増やし統計学的検討も含めた解析を行い、研究成果を国内外の学会や論文で報告していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の購入の際、値引きがあり予定よりも安く購入できたこと、また、基礎検討の段階でやや時間を要し、使用する動物数も当初より少なかったので来年度以降に余った予算を使用する予定である。
使用計画:繰越金が発生してしまったが、次年度の研究費とあわせて研究遂行に必要な物品などを適宜購入していく予定である。具体的にはモデル動物の作成及びフローサイトメトリー・病理学的検討で使用する抗体、病原性自己抗体測定用のELISAキットなどの物品を購入する予定である。また適宜、研究成果を国内外の学会や論文で報告するため、旅費や英文校正代にあてる予定である。
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