研究課題
POEMS(クロウ・深瀬)症候群は、ニューロパチーを中核に、胸・腹水、内分泌異常、皮膚変化、浮腫などの特異な組み合わせの症候を呈する重篤な疾患である。病態にはまだ不明の点が多いが、モノクローナルな形質細胞増殖と血管内皮増殖因子(VEGF)の過剰産生が病態の中心であると考えられている。適切に治療されない場合、四肢麻痺と多臓器不全により、機能・生命予後は著しく不良である。同様の形質細胞関連の疾患である骨髄腫の治療が奏功すると考えられ、試みられている。しかし複数の治療手段のいずれをどのように選択すべきかの指針は構築されていない。ランダム化群間比較試験により、有効性と安全性が示されている治療薬は、現時点ではサリドマイドのみである。また若年例では自家移植が第一選択に相当する治療であると考えられている。本研究の目的はPOEMS症候群の至適治療戦略の構築である。現在解決すべき課題は、①サリドマイド抵抗例における治療選択肢の探索、②新規の各骨髄腫治療薬の本症候群における有効性と安全性の検討、③自家移植の適応基準の作成である。今年度はサリドマイド抵抗例におけるレナリドミドの有効性についての臨床試験の結果について公表した。また、新規治療薬であるボルテゾミブ、ダラツムマブ等の有効性と安全性について検討を進めている。自家移植の適応基準の検討については研究の準備中である。その他、POEMS症候群の新規診断基準の提唱についての論文、本症候群の全国調査の結果についての論文を公表した。
2: おおむね順調に進展している
POEMS症候群の各新規治療の有効性と安全性についての検討は、ほぼ予定通りに進行している。その他、診断基準の作成など、新規治療を適切に進めて行くのに必要な体制整備に貢献する研究成果を上げることができた。
新規治療薬の有効性と安全性についての研究を引き続き進める。新規治療の選択肢としては、ボルテゾミブ、ポマリドミド、ダラツムマブ等が挙げられる。現在、ボルテゾミブについては、相当数の症例数を集積できており、データの解析等を進めている。治療抵抗の難治例に対して、ダラツムマブによる新規治療を実施中である。さらに、ポマリドミドの使用については、倫理委員会の承認を得たため、今後進めて行く。自家移植の適応基準の検討についても進める予定である。自家移植の実施、非実施症例の予後について比較検討する。
当初の予定と比較し、物品費、人件費が少なく済んだため。次年度は本症候群の臨床研究の継続を予定している。研究の遂行のための事務職員の雇用等を予定している。
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