研究課題
2019年度は.重症筋無力症合併筋炎,慢性移植片対宿主病に伴う筋炎組織を検討し,programmed death-1 (PD-1)+リンパ球の非壊死筋線維包囲像,programmed death-ligand 1 (PD-L1) の非壊死筋線維上の発現を認め,免系チェックポイント機構の異常に伴う組織像が存在することを確認した.2020年度は,免疫チェックポイント阻害薬による免疫関連有害事象としての筋炎(irAE筋炎)の臨床病理像を検討した.筋炎特異抗体や先行筋障害因子がない純粋な10例のirAE筋炎では,多巣性の壊死像を認めPD-1+リンパ球の非壊死筋線維包囲像および近傍筋線維とマクロファージにPD-L1の発現を高頻度に認め,irAE筋炎におけるPD-1+/PD-L1関連病理像の存在を明らかにした.2021年度は,免系チェックポイント機構に伴う筋炎の病態の解明のために,MHCクラスIを発現するCD8陽性T細胞が非壊死性筋線維に侵入している病理像を有する患者58名[封入体筋炎(IBM)43名と多発筋炎6名を含む]の筋試料のRNA-シークエンス解析を行った.IBMと多発筋炎で同定された発現遺伝子とパスウェイはほぼ同等であった.しかし,細胞接着分子に関するパスウェイは,多発筋炎およびコントロールと比較して,IBMで発現が増加していた(p < 0.01).特にカドヘリン1をコードするCDH1がIBMの筋肉で異所的に発現していた.ウェスタンブロッティングにより,IBMの筋肉にCDH1が存在することが確認され,免疫組織化学的にも対照群では抗CDH1抗体陽性筋線維はなく,他の炎症性筋疾患ではほとんど陽性にならないのに,IBMの筋肉では抗CDH1抗体陽性であることが確認された.筋線維おけるCDH1の発現はIBMに特異的であり,IBMの病態解明への手がかりとなる可能性が明らかになった.
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Ann Neurol.
巻: 91 ページ: 317-328
10.1002/ana.26304