研究実績の概要 |
2021年度は遺伝性患ATTRアミロイドーシス(家族性アミロイドポリニューロパチー)患者における脳へのアミロイド沈着を定量するため,Pittsburgh compound-BをリガンドとしたPET検査(PiB-PET)を実施した.PiB-PETは年度内に14名の患者に対して実施し,うち7名は2~5年のインターバルを空けた2回目の検査であった.2021年度は従来の手動での関心領域の設定に代えてCortexID Suite (GE Healthcare, Waukesha, WI)を用いた関心領域の自動設定を行い,より客観的なstandardized uptake value ratio (SUVR)の評価を可能とした.また,健常者脳のデータベースと比較し3D-SSP z-scoreイメージ画像を作成することに成功した.この手法を用いて全画像を解析し以下の結果を得た. 1)脳へのATTRアミロイド沈着は,ATTRアミロイドーシス発症からの期間に強く相関する(correlation coefficient = 0.67, P < 0.001).2)アミロイド増加率(SUVRの増加率)は男性(0.005/年)にくらべ女性(0.013/年)の方が大きい(P = 0.046).3)2年から5年のインターバルを空けた同一患者の解析では,2回目の検査でアミロイドの有意な増加を認めた(P = 0.002).4)脳へのアミロイド沈着は,アミロイドーシス発症約10年後に小脳上部表面から始まり,15年後頃には小脳全体,シルビウス裂,大脳縦裂に広がり,20年後以降には大脳全体に広がる. 以上からPiB-PETはATTR型脳アミロイドアンギオパチーの早期診断や治療効果判定の評価に有用なバイオマーカーであることが明らかになった.
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