研究課題
背景:多系統萎縮症 (Multiple system atrophy: MSA)はパーキンソニズムや小脳症状、錐体路症状や自律神経障害を呈する進行性の神経変性疾患である。早期診断に脳MRI所見が重要な役割を果たすが、特異度が高いものの感度の低さが指摘されてきた。本研究は個別脳容積画像解析手法であるindividual voxel-based morphometry adjusting covariates (iVAC)を用い、MSAに特徴的な脳形態的異常をどのように捉えるか検討することを目的とした。対象・方法:名古屋大学脳神経内科を受診したMSA 53名 (MSA-parkinsonism type: MSA-P 20名、MSA-cerebellar type: 33名)を対象とした。またMSAと比較のため、年齢と性別をマッチさせたパーキンソン病 (Parkinson’s disease: PD)患者 53名も対象とした。iVAC画像の標準脳データとして健常コホートデータベースから189名を抽出した。iVACを用いてMSAとPDについて脳幹と被殻の評価、iVACとの対照として、T2強調画像における被殻と橋の肉眼的萎縮の評価を2名の評価者によって施行した。2者で所見に相違があった場合は相談の上所見を決定した。結果:MSAとPDにおける、iVACとT2強調画像間における感度は98.1%、69.8%、特異度は96.2%、96.2%であった。陽性的中率はiVAC画像とT2強調画像で96.3%、94.9%、陰性的中率は98.1%、76.1%であった。結論:本研究では個別脳容積画像解析手法であるiVACを用いることでT2強調画像における肉眼的萎縮評価よりも鋭敏にMSAの形態的異常を捉えることができた。iVACを用いた画像解析手法はMSAの診断ツールになり得る可能性がある。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件)
Parkinsonism Relat Disord.
巻: 90 ページ: 114-119
10.1016/j.parkreldis.2021.07.025.