研究課題/領域番号 |
19K07965
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
小野 賢二郎 金沢大学, 医学系, 教授 (70377381)
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研究分担者 |
辻 まゆみ 昭和大学, 医学部, 教授 (40155544)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / オリゴマー |
研究実績の概要 |
目的:アミロイドβ蛋白(amyloid β-protein: Aβ)の凝集は、アルツハイマー病の病態に深く関わっているが、凝集最終段階である成熟線維より中間凝集体であるオリゴマーやプロトフィブリルの毒性に注目が集まっている(オリゴマー仮説)。しかし、その機序に関してはまだ不明瞭な点が多い。 昨年度までの研究によりAβ1-42 プロトフィブリルが膜損傷により神経毒性を発揮することを明らかにした。2021年度はフェノール化合物によるAβ1-42 プロトフィブリルの細胞毒性軽減効果およびその機序を明らかにする。 方法と結果:①Aβサンプルの準備:サイズ排除クロマトグラフィーを用いてAβ1-42溶液をインジェクトし、主にモノマーである低分子画分と高分子オリゴマーであるプロトフィブリル(protofibrils:PF)画分を抽出した。 ②フェノール化合物によるAβ1-42 PF毒性軽減効果の検討:SH-SY5Y細胞を用いた3-[4,5-dimethylthiazol-2-yl]-2,5-diphenyltetrazolium bromide(MTT)法にてcell viabilityを測定し、フェノール化合物の一種であるミリセチンがAβ1-42 PFの細胞毒性を軽減させることを明らかにした。 ③フェノール化合物によるAβ1-42 PF毒性の軽減機序の検討:酸化ストレスマーカーであるreactive oxygen species(ROS)、膜脂質過酸(diphenyl-1-pyrenylphosphine:DPPP)化を測定した結果、ミリセチンがROS、DPPPマーカーを減少させることを発見し、位相差顕微鏡および蛍光顕微鏡でも確認した。さらにMembrane Fluidity Kitにて蛍光標識後の細胞膜の膜流動性を検討し、ミリセチンがPFの膜流動性低下を抑制させることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
アミロイドβ蛋白凝集(サイズクロマトグラフィーによる凝集体抽出、凝集活性、細胞毒性)の実験系はすでに確立している。2021年度は秋に研究代表者の異動があったが、共同研究者である辻まゆみ博士(昭和大学)との連携が順調に進んだために、計画以上に進展することができた。来年度はさらに研究を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
フェノール化合物のAβ1-42 PF毒性に対する細胞保護効果の詳細な機序に関してさらに辻博士(昭和大学)と協力して細胞実験を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画の立案段階、科学研究費申請段階ですでに研究に着手しており、本年度も共同研究者との連携が順調であったために費用を節約して実行することができた。さらに秋に研究代表者の異動があったため次年度使用額の研究費が生じた。来年度の研究費に当てる予定である。
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