研究課題/領域番号 |
19K07968
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
北川 一夫 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (70301257)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 遠隔虚血コンディショニング |
研究実績の概要 |
中大脳動脈永久閉塞に対して遠隔虚血コンディショニングを1日1回行うことで72時間後まで脳保護効果が観察されることを昨年度に報告している。今年度は脳血管内皮の関与を想定し、一酸化窒素合成酵素(NOS)阻害薬を用いて遠隔虚血負荷による梗塞体積縮小効果が消失するか検討した。また、内皮型NOS(eNOS)のリン酸化が遠隔虚血で亢進しているかウエスタンブロットにより検討した。成熟C57BL/6マウスを用いて左中大脳動脈(MCA)を露出させ、嗅索より近位部を閉塞した。MCA閉塞から70分間の脳皮質血流を虚血周辺部でレーザードプラ血流計でモニターした。遠隔虚血負荷群はMCA閉塞30分後から両側下肢鼠径部でカフを用いて200mmHgの負荷をかけ、5分間駆血、5分間解放を4回反復した(RIC群)。対照群は遠隔虚血負荷なしで同じ時間麻酔をかけた群とした(Sham群)。左中大脳動脈(MCA)閉塞直後に①生食、②L-NIO(10mg/kg)または③L-NAME(10mg/kg)を腹腔内投与した。MCA閉塞30分後から偽処置または遠隔虚血を行い、24時間後に神経症状を観察、TTC染色より梗塞体積を算出した。(各群n=6)ウエスタンブロットのサンプルはMCA閉塞から70分後のSham群、RIC群でそれぞれ虚血周辺部を採取した。遠隔虚血負荷または偽負荷後の虚周辺部の血流は、生食投与群ではSham群に対してRIC群で有意に増加していたが、NOS阻害薬投与群はどちらもSham群とRIC群で差はみられなかった。24時間後の梗塞体積は生食投与群ではSham群に対してRIC群で有意な縮小をみとめたが、NOS阻害薬投与群はどちらもSham群とRIC群で差はみられなかった。ウエスタンブロットではSham群に対してRIC群でリン酸化eNOSが亢進していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遠隔虚血コンディショニングの脳保護効果は内皮機能を介した脳軟膜側副血行発達による早期虚血病変の軽減効果と関連し、脳梗塞サイズを縮小することを示すことができた
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今後の研究の推進方策 |
現在までは健常な成熟マウスを用いて検討したが、老齢マウス、高血圧・糖尿病等の病態モデルマウスを用いて検討する予定である。また、血管認知症モデルとして確立されている慢性低灌流モデルに対しての遠隔虚血コンディショニングの効果を検討する予定である。 現在は再灌流モデルにおいて再灌流後の遠隔虚血コンディショニングの脳保護効果を検討している。 また、ヒト脳梗塞患者においても上肢または下肢への虚血負荷を行った際の脳循環動態を経頭蓋超音波ドプラを用いて検討する臨床研究を開始している。
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