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2023 年度 実施状況報告書

mGluR5異所性発現による神経変性疾患発症メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 19K07971
研究機関東京大学

研究代表者

中尾 晴美  東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (50535424)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2025-03-31
キーワード小脳 / グルタミン酸受容体 / mGluR5 / 神経変性 / 老化 / 寿命 / トランスジェニック / マウス
研究実績の概要

本研究では、小脳プルキンエ細胞特異的に代謝型グルタミン酸受容体5型(mGluR5)を発現するようなマウス(L7-mGluR5a Tgマウス)を作製し、このマウスを同じグループIのGタンパク質共役型受容体に属する代謝型グルタミン酸1型(mGluR1)ノックアウトマウス(mGluR1 KO)と掛け合わせた。mGluR1 KOマウスでは、シナプス形成の異常、小脳運動失調、瞬目反射条件付け学習の異常などが見られるが、L7-mGluR5a Tgマウスではこれらの異常がすべて改善し、小脳プルキンエ細胞ではmGluR5がmGluR1の機能を代替できることがわかった。
しかしながら、これらのマウスでは、mGluRの足場タンパク質であるHomerとの結合量が少ないことが観察され、シグナル伝達効率に違いがあることが示唆された。また、加齢に伴って被毛の褪色や体重減少、寿命の短縮などが見られ、特に雄個体では雌個体よりも早い9ヶ月齢あたりから、それらの表現型が見られた。9ヶ月齢と13ヶ月齢の雄マウスの小脳からRNAを抽出し、RNA-Seq解析を行ったところ、9ヶ月齢の時点で、小脳プルキンエ細胞に多く発現している分子のいくつかが野生型マウスと比較して発現量が変化していることがわかった。これらの発現差異があった分子についてはリアルタイムRT-PCRによっても同様の結果を得ることができた。mGluR5の異所性発現により発現量に差異がみられた分子は、カルシウムシグナルや脂質代謝に関わるものであった。また、13ヶ月齢の脳の免疫染色によって、トランスジェニックマウスでは、活性型ミクログリアマーカーであるIbaI陽性細胞がコントロールと比較して増加している傾向も見られたが、解析数が少ないため炎症が進んでいるかどうかの断定はまだできない。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

mGluR5小脳プルキンエ細胞特異的発現マウスでは、表現型が早く現れる雄でも9ヶ月ほどかかる。受精卵の移植により個体生産を行なったが、飼育室の空調の不具合などがあり、生産に遅れが生じた。そのため、期間を延長した。

今後の研究の推進方策

13ヶ月以上の野生型マウスおよび、トランスジェニックマウスについて、さらに解析個体数を増やして、プルキンエ細胞の脱落や、炎症などが見られないか確認し、mGluR5の発現が成体マウスの小脳プルキンエ細胞で増加したことによって、神経変性が生じるかを確認する。また、活動量や体温、概日リズム等について、NanoTagを移植して測定を行い、mGluR5の異所性発現が個体にどのような影響を与えているかについて確認する。9ヶ月齢の雄のトランスジェニックマウスの小脳で発現量に変化のあった分子について、免疫染色やウェスタンブロット等でタンパク質についても発現を確認する。また、雌個体についても同様の解析を行う。雌雄ともに、さらに若い時期での遺伝子発現について解析を行い、どの時点から寿命の短縮や体重の減少につながるような変化が起こっているのかを確認する。

次年度使用額が生じた理由

解析をするマウスの月齢が高齢であるのと、当初予定していた個体の生産が、飼育室のトラブルにより大幅に遅れたため。

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公開日: 2024-12-25  

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