研究課題/領域番号 |
19K07972
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
他田 真理 新潟大学, 脳研究所, 准教授 (30646394)
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研究分担者 |
池内 健 新潟大学, 脳研究所, 教授 (20372469)
竹林 浩秀 新潟大学, 医歯学系, 教授 (60353439)
加藤 隆弘 九州大学, 大学病院, 講師 (70546465)
柿田 明美 新潟大学, 脳研究所, 教授 (80281012)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | microglia / macrophage / astrocyte / leukoencephalopathy / CSF1R |
研究実績の概要 |
本年度は、まず、アストロサイトに対する、ミクログリアの影響の有無をヒト脳において確認することに集中して研究を行なった。ミクログリアの発生や分化、存続や機能維持に必須であることが知られているCSF1Rをコードする遺伝子の異常を有する、Adult-onset leukoencephalopathy with axonal spheroids and pigmented glia (ALSP)患者においては、組織学的にミクログリアの分布や形態変化の異常が認められ、その機能異常が病態に深く関わっていることが推定されている。そこで、本疾患の患者脳において、障害部位に注目してアストロサイト及びミクログリアの組織障害に対する反応性を観察した。結果として、1)亜急性期虚血病変では、通常、壊死巣内にはマクロファージの浸潤、壊死巣の周辺には顕著なミクログリアの活性化が認められる。しかし、CSF1R変異例においては、内部のマクロファージ浸潤は明らかに乏しく、さらに壊死巣周囲ではIba1陽性ミクログリアの増加や活性化を示す形態変化に乏しかった。一方で、GFAP陽性のastrocyteは壊死巣内部ではまばらに、周囲では、密に増殖し、核や胞体がサイズを増し、明らかに反応性アストロサイトの形態に変化していた。2)慢性白質病変については、本疾患に特徴的に出現する色素性マクロファージが多数出現している時期にはアストロサイトの反応性変化や増殖は明らかではなく、色素性マクロファージがほとんど見られず、泡沫状の胞体を示すマクロファージ出現している部位では、アストロサイトの反応が顕著であった。さらに進行した白質病変においては、マクロファージ及びミクログリアは高度に減少し、アストロサイトは線維性に変化し、密なグリオーシスを呈していた。こうしたパターンが共通して認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ミクログリアの組織障害に対する変化は、CSF1R遺伝子変異を有さない、疾患対象例と異なることは明らかであった。一方で、アストロサイトの変化については、GFAPによる通常の観察において、CSF1R遺伝子変異例と、それを有さない疾患対象例との間に明らかな差異をALSP群に共通して指摘することは困難であった。このため、さらに定量的に、何らかの分子マーカーを用いた、数のみではなく、活性化程度の客観的評価が必要であると考えられた。本年度中にいくつかの候補となる分子マーカーを(IL-1beta, IL-10, iNOS, TGFα等)試行したものの、ヒト剖検脳における免疫組織化学で良好な結果が得られるマーカーを未だ同定できておらず、さらに他の候補分子について試行を継続していく。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト剖検疾患脳において、アストロサイト活性化状態の変化を捉えるために有用な分子マーカーをさらにいくつか試行し、アストロサイトの量的、質的変化を定量的に詳細に検討する。まず、通常の光顕標本で二次元的に評価し、その結果は、すでに成功している、ミクログリアの3Dイメージングに、アストロサイトのイメージングを重ねることによって3次元的に確認する。ヒト脳における観察からミクログリア及びアストロサイトの組織障害による変化が明らかにした後に、モデルマウスにおける組織障害実験を行い、変動する分子の検索から、ミクログリアとアストロサイトの間に介在する分子を同定したい。
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