研究課題/領域番号 |
19K07979
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
永井 真貴子 北里大学, 医学部, 講師 (80420488)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 筋萎縮性側索硬化症 / 海馬 / アデノ随伴ウィルス / TDP-43 |
研究実績の概要 |
認知症を伴う筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の剖検脳を用いた解析では,リン酸化TDP-43タンパクの凝集が嗅内皮質・海馬歯状回・CA3/CA1に認められる。本研究ではアデノ随伴ウィルス(AAV)を用いてALS関連異常蛋白をマウス海馬及び関連部位に発現させることで神経細胞死の伝播を再現したモデルを作成し,その機序について解明することが目的である。TDP-43は正常では核に存在するRNA結合タンパクでRNA輸送や転写の調節に関与するが、ALS患者の神経細胞ではリン酸化されたTDP-43が細胞質に沈着することが分かっている。 まず緑色蛍光蛋白(GFP)cDNAを組み込んだAAV(AAV-GFP)をマウスの海馬および海馬に関連する部位(海馬CA1/CA3, 歯状回,嗅内皮質,内側中隔野)に注入して,注入部位のGFP発現細胞群,GFPを発現した神経線維の投射先の解析を行った。GFPは注入部位の神経細胞の主に細胞質と軸索に発現し,嗅内皮質と内側中隔野のGFPは海馬に投射することが確認された。続いて正常TDP-43cDNA (TDP-43W)とALS患者由来のA315T変異を導入したTDP-43cDNA(TDP-43A)とC末断片(TDP-43C)をAAVベクターに組み入れ,海馬CA1/CA3,嗅内皮質に注入し,2週間後にTDP-43蛋白発現の解析を行った。TDP-43W,TDP-43A蛋白は注入部位の神経細胞の核に発現し, TDP-43Cは細胞質に分布し軸索の近位部まで発現を追うことができた。AAVベクターを注入した後、1か月・2か月後にマウス大脳を解析するとTDP-43W・TDP-43A蛋白が発現した神経細胞は細胞死を来したが、投射先の神経細胞にリン酸化TDP-43の発現や細胞死は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度は緑色蛍光蛋白(GFP)cDNAを組み込んだAAV(AAV-GFP)をマウス海馬および海馬に関連する部位(海馬CA1/CA3, 歯状回,嗅内皮質,内側中隔野)に脳定位固定装置を用いて注入した。2週間後にマウスを還流固定して大脳切片を作成、注入部位のGFP発現細胞群,GFPを発現した神経線維の投射先の解析を行った。GFPは注入部位の神経細胞の主に細胞質と軸索に発現し,嗅内皮質と内側中隔野のGFPは海馬に投射することが確認された。2020年度は正常TDP-43cDNA (TDP-43W)とALS患者由来のA315T変異を導入したTDP-43cDNA(TDP-43A)とC末断片(TDP-43C)をAAVベクターに組み入れ,海馬CA1/CA3,嗅内皮質に注入し,2週間後に大脳凍結切片を抗FLAG抗体で免疫染色することによりTDP-43蛋白発現の解析を行った。TDP-43W,TDP-43A蛋白は注入部位の神経細胞の核に発現し TDP-43Cは細胞質に分布し軸索の近位部まで発現を追うことができた。2021年度はAAVベクターを注入した後、1か月・2か月後にマウス大脳切片を作成して解析するとTDP-43W・TDP-43A蛋白が発現させた神経細胞は細胞死を来したが、投射先の神経細胞に細胞死は認められなかった。TDP-43C蛋白を発現させた神経細胞は細胞死を来さなかった。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予想に反してTDP-43W・TDP-43A蛋白が発現させた神経細胞は細胞死を来したが、投射先の神経細胞に細胞死は認められなかった。またTDP-43C蛋白を発現させた神経細胞は細胞死を来さなかった。今後はAAV注入後さらに長い期間観察してTDP-43C蛋白発現細胞が細胞死を来すのか、また投射先の神経細胞の変化を免疫染色を用いて病理学的に、あるいはウェスタンブロット法などの蛋白の解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
AAV注入マウスの観察期間延長のため。マウスの購入・飼育費に使用予定。
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