研究課題
HTLV-1関連脊髄症(HAM)はHTLV-1感染細胞に起因する神経難病で、治療にはステロイドやインターフェロンαが用いられるが、その効果は限定的である。最近われわれはHAM患者に対する抗CCR4抗体療法が、HTLV-1感染細胞を破壊しHTLV-1プロウイルス量を下げることで、脊髄炎症および臨床症状の改善をもたらす可能性を示したが、その一方でプロウイルス量の低下が不十分な症例や有効であっても副作用の皮疹を認める例が存在する等の問題点もわかってきた。そこで本研究は、①抗CCR4抗体に対する低応答性のメカニズム解明、②抗CCR4抗体療法の治療効果予測マーカーと副作用発現予測マーカーの探索・同定、③抗CCR4抗体によるプロウイルス量のセットポイント低下のメカニズム解明、を通じてHAM患者に対する抗CCR4抗体療法の最適化を目指す。2019年度、抗CCR4抗体に対して低応答性を示す症例において、通常感染細胞が示すCD4+CCR4+CADM1+のフェノタイプをもたない細胞集団に感染細胞が多く含まれることを示唆する結果を得た。2020年度は、その結果の検証と抗CCR4抗体療法の副作用発現予測マーカーの探索を実施する予定である。
2: おおむね順調に進展している
抗CCR4抗体に対する低応答性のメカニズムを解明するために、抗CCR4抗体療法を受けた6例について、治療開始前から治療開始後1年間の各visitにおけるCCR4陽性細胞率、CADM1陽性細胞率など末梢血リンパ球におけるフェノタイプの変化をフローサイトメーターで解析した。そのフェノタイプの変化をプロウイルス量の経時変化と比較すると、驚いたことにプロウイルス量が低下しなかった低応答症例であっても、抗CCR4抗体の投与後、CCR4陽性細胞率およびCADM1陽性細胞率は低下していた。この結果から、抗CCR4抗体に対する低応答性症例では、通常感染細胞が示すCD4+CCR4+CADM1+というフェノタイプをもたない細胞集団に感染細胞が多く含まれることが示唆された。
上記の結果を受けて、抗CCR4抗体治療に対する低応答性症例の末梢血単核球を用いて、治療前後で、どの細胞分画にプロウイルス量が高いのかを明らかにする。低応答性を示さない症例についても同様の検討を行い、抗CCR4抗体に対する低応答性のメカニズムとしてHTLV-1 tropismの個体間差の可能性を検証する。また、抗CCR4抗体療法の副作用発現予測マーカーを探索する目的で、制御性T細胞の割合や数、血清可溶性IL-2受容体、血清CXCL10濃度などのマーカーと副作用の出現との関連を調査する予定である。
すべて 2020 2019 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 4件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (1件)
Proc Natl Acad Sci U S A
巻: 117(21) ページ: 11685-11691
10.1073/pnas.1920346117.
J Neurol Neurosurg Psychiatry
巻: 91(3) ページ: 321-323
10.1136/jnnp-2019-321955
Cell Rep
巻: 29(3) ページ: 724-735
10.1016/j.celrep.2019.09.016.
Orphanet Journal of Rare Diseases
巻: 14(1) ページ: 227
10.1186/s13023-019-1212-4.
Front Microbiol
巻: 10 ページ: 2110
10.3389/fmicb.2019.02110
http://nanchiken.jp/