研究課題
本研究は、ATXN8OS関連ALSの病態に関連する蛋白の同定とiPS細胞由来の運動ニューロンモデルの構築と治療法開発を目指す。さらに、ブレインバンクから検体を提供いただき、病理組織も用いて結果を検証する。まず、病理的にALSと確認されている患者の遺伝子のスクリーニングを東京都健康長寿医療センター高齢者ブレインバンクと共同研究にて実施した。予定は最低30例であったが、49例提供していただき、全例で検査を施行した。その結果1例でATXN8OS変異陽性者が同定された。次にATXN8OS変異陽性患者の人工多能性幹 (iPS)細胞の樹立については、1例では既にiPS細胞の樹立は終了している。最近の研究でATXN8OS遺伝子変異陽性ALSがさらに2例同定された。その2症例の線維芽細胞を樹立し、現在iPS細胞を作製中である。また、既に樹立しているATXN8OS変異陽性患者のiPS細胞の運動ニューロンへの誘導を行い、運動ニューロンへ誘導することができ、現在、形態的、生化学的な性質を解析中である。さらに、iPS細胞由来運動ニューロンの染色とrepeat-associated non-AUG (RAN) 翻訳の確認を行っていくために、ポリセリンに続くアミノ酸配列、およびポリアラニンに対するポリクローナル抗体を作成し、ELISA標的抗原ペプチドへの反応は得られた。また、RAN翻訳にて生じるポリアミノ酸と関連する蛋白の同定のために、GFP融合の正常長ATXN8OSを発現するプラスミドベクターを構築した。iPS細胞由来運動ニューロンへの治療介入のため、3種類のsiRNAと3種類のアンチセンス核酸を設計・作製し、現在線維芽細胞において発現抑制が可能かの予備実験を行っている。
2: おおむね順調に進展している
一部、計画以上の検体の遺伝子スクリーニングをできている。また、治療実験も既に予備実験を開始しており、進捗は早い。他方、iPS細胞への分化に関しては、新しい患者検体が得られたので、それを優先して行っているため、少し遅れている。全体としては、おおむね順調と考えらえる。
今年度の研究にて、世界に先駆けて病理学的確定のATXN8OS遺伝子陽性例が同定できたので、すでに、TDP43の蓄積などは、確認されている症例であるが、さらなる免疫組織学的解析を行うことが可能となった。また、2例の新規患者さんも同定され、本疾患が、さらに多く存在していることが分かった。今後、病気に関連する前頭葉におけるATXN8OS発現とそのアンチセンスになるATXN8発現を比較しながら、定量方法についてさらに検討を行い、発現の抑制が可能であるかを検討していく。また、ベクターを構築できたので、細胞実験で結合蛋白の同定を目指す。
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J Neurol Sci
巻: - ページ: -
10.1016/j.jns.2019.07.003
J Neuropathol Exp Neurol
10.1093/jnen/nlz052
日本カウンセリング学会誌
巻: 40 ページ: 95-100
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