以前我々は、オートファジー抑制因子であるRubiconが加齢に伴い増加することを報告し、加齢に伴うオートファジー活性低下と個体老化の要因の一つであると考えた。野生型ショウジョウバエでは加齢に伴いRubiconタンパク質が増加するが、mRNAレベルでの変化は認められない。そこで、翻訳後修飾が加齢によるRubicon増加に関与することを予想し、液体クロマトグラフ/タンデム質量分析(LC-MS/MS)解析を行った。加齢個体において翻訳後修飾の雌雄差が認められることが明らかとなったが、若齢メス個体のシーケンスカバー率が低く一部未完了であった。そこで、よりRubiconタンパク質の豊富な画分を調製して再解析を行ったところ、メス個体では、オスで認められた加齢に伴う修飾変化が認められないことを確認した。加齢に伴うRubiconタンパク質の増加は雌雄ともに認められることから、翻訳後修飾以外のメカニズムが関与することが示唆され、当初の予想とは異なる結果となった。しかし、翻訳後修飾の違いからRubiconの機能に性差がある可能性を考え検証実験を行った結果、上記の可能性を示唆する結果が得られている。近年、オートファジー活性に性差があることが複数の動物種で報告されており、また、オートファジーが重要な役割を担う老化・寿命や疾患メカニズムにおける性差が注目されている。本研究で見出したRubicon翻訳後修飾の性差は、そのメカニズムの一端を担う可能性が考えられる。
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