研究実績の概要 |
より直接的な免疫療法の開始のために、アミロイドbeta蛋白(Abeta)のアミノ末端4-10を発現する組換えダイズ蛋白(Abeta+)をマウスに投与してモノクローナル抗体の作成を行った。 大豆蛋白の経口免疫療法の実用化について製薬会社と協議した。 治療法の薬効評価のためにアルツハイマー病バイオマーカーの検討を続けた。前年はMass Spectrometryによる脳脊髄液Abeta種の測定について報告したが、本年は脳脊髄液中のTotal Tau、p181Tau、p217Tau, Neurofilament light chain (NFL)の4種を同時に測定する系を開発した。各種神経疾患を測定中であり、より早期からアルツハイマー病を診断でき、他の認知症疾患との鑑別ができる診断法として期待される。 加齢による認知機能低下を明らかにするために19歳から93歳までの地域住民総数4442例の認知機能を経時的に測定した。MMSEの低下は55歳から64歳で低下を始めた。低下には教育年数と年齢が相関した。このうち56例の軽度認知障害と5例の認知症が認められた。軽度認知障害のMMSEの経時的検討では13例が改善し、5例は変化なく、7例が悪化した(Nakahata N, Kawarabayashi T, et al., J Zlzheimers Dis 2021)。Apolipoprotein Eのgenotypによってこの変化は異なり、さらに解析を続けている。 我々の参加するDominantly Inherited Alzheimer Network (DIAN)研究において、Resting state functional connectivity MRI(rs-fMRI) の検討を行った。18から94歳の1340例を対象にrs-fMRIを行い、その部位的な比較から患者がアルツハイマー病期のどこにあるのか推定できることを示した。アルツハイマー病では発症前から脳の機能的老化が促進していることが示された。rs-fMRIは脳のアルツハイマー病の機能的老化を評価する指標になりうると考えられた(Gonneaud J, et al., Nature Comm, 2021)。
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