我々が同定した病型SCA42におけるCACNA1G変異はT型カルシウムチャネルの電位センサーとして重要なアミノ酸を変える一塩基変異であった。ゲノム編集技術によりCacna1g変異を導入したノックインマウス(SCA42モデルマウス)を作製し、運動失調症状およびプルキンエ細胞変性様像を示すことを確認している。過去の報告からCacna1gのノックアウトマウスでは運動失調症状を生じないことから、SCA42モデルマウスの症状はCacna1g変異によるGain-of-functionと考えられる。変異型と正常型の両方のCACNA1G遺伝子を持つSCA42において変異型のみ遺伝子発現を抑制する新規治療法の開発を目的としてCRISPR/Cas13dによるCACNA1Gの変異型転写物を分解する方法を検討した。令和元・二年度において、小脳初代培養系、CRISPR/Cas13dシステムを用いるAAV2ベクターの構築及びウイルス作製系を確立した。令和三年度においては、プルキンエ細胞の微量なCacna1g mRNAの一塩基変異を検出することが難しく、感染及び効果検出の時期、AAV2量、gRNAの特異性の条件を検討するために、転写産物の分解によりプルキンエ細胞が変性し形態変化を観察できる分子をターゲットとし実験条件を検討した。プルキンエ細胞特異的プロモーター下でGFPを発現するAAV2を初代培養7日目に感染させ、プルキンエ細胞の形態をリアルタイムで観察しながら条件検討した。培養14日目にターゲット特異的gRNAとCRISPR/Cas13dを発現するAAV2を感染させたところ20日後に細胞変性死を確認し、ターゲット特異的に転写物をノックダウンする系を確立出来たことを確認した。Cacna1g変異特異的gRNAを持つAAV2を用いてノックインマウスの小脳初代培養系における変異型転写物の特異的な分解に関しては現在検討中である。
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