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2020 年度 実施状況報告書

日本人多発性硬化症での疾患修飾薬による進行性多巣性白質脳症多発機序の解明と防止

研究課題

研究課題/領域番号 19K07997
研究機関九州大学

研究代表者

河野 祐治  九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (20333479)

研究分担者 松下 拓也  九州大学, 大学病院, 講師 (00533001)
渡邉 充  九州大学, 大学病院, 助教 (30748009)
中村 優理  九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (40822375)
磯部 紀子  九州大学, 医学研究院, 特任准教授 (60452752)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード多発性硬化症 / 進行性多巣性白質脳症 / JCウイルス / HLA
研究実績の概要

多発性硬化症(MS)は,疾患修飾薬により再発を減らすことが可能になったが,重大な副作用として長期使用に伴い潜伏感染しているJC virus (JCV)が起こす進行性多巣性白質脳症(PML)がある.特に日本人では欧米人の約10倍のPML発症がみられ,大きな問題になっている.本研究ではPML発症が多い理由の解明,PML発症リスク因子の同定と発症予測バイオマーカーの確立を目的とする.初年度は,JCVに対する免疫機構,特に細胞性免疫能が低い集団で多い遺伝因子が感受性を付与する遺伝因子であり,それを保有するものではJCVに対する細胞性免疫の効率が低くなる.という仮説に関して,全ゲノム関連解析の前段階として,細胞性免疫応答に強く関連したHLA多型と,液性免疫反応の結果である抗JCV抗体の陽性率および抗体価,それに,疾患修飾薬としてフィンゴリモド使用との関連を解析した.その結果,MSでよく見られるHLAの一つを持った患者では抗JCV抗体の陽性率および抗体価が低く,また別のHLAを保つ場合は反対に陽性率が高いこと,さらに別のHLAでは抗体価が高いことや,フィンゴリモド使用者では抗JCV抗体の抗体価が高く,治療歴が長いほど抗体価も高いことなどを明らかにした.さらに,多変量ロジステック解析を行い,年齢,HLAが抗体陽性率に関与していることがわかった.引き続き,fingolimod使用中のMS患者の末梢血免疫細胞のフローサイトメトリーを行い,免疫細胞のサブポピュレーションと抗JCV抗体の関連をみる研究を行っており,現在はヘルパーT細胞との関連をまとめている.さらに,標的となるJCV抗原の種類とエピトープの解析,JCV特異的T細胞の頻度及びJCV特異的T細胞の質的特徴の検討に関しての準備を進めている.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

現在は,fingolimod使用中のMS患者の末梢血免疫細胞のフローサイトメトリーを行い,免疫細胞のサブポピュレーションと抗JCV抗体の関連をみる研究を行っており,現在はヘルパーT細胞との関連をまとめているが,それに引き続く,標的となるJCV抗原の種類とエピトープの解析,JCV特異的T細胞の頻度及びJCV特異的T細胞の質的特徴の検討などが軌道に乗ってなく,やや遅れていると判断している.

今後の研究の推進方策

以下の作業仮説を立て検証を行う.仮説1: JCV特異的T細胞の頻度,抗JCV抗体やJCV特異的T細胞が認識する標的エピトープ数,JCV特異的T細胞の活性化の程度,疾患修飾薬によるT細胞の抑制の程度によってJCVに対する細胞性免疫の効率が決まる.仮説2: JCVに対する免疫機構,特に細胞性免疫能が低い集団で多い遺伝因子が感受性を付与する遺伝因子であり,それを保有するものではJCVに対する細胞性免疫の効率が低くなる.仮説3: PMLを起こしやすいウイルスは,変異によるJCV特異的細胞性免疫からエスケープしやすく,変異ウイルスの増殖性も高い.したがって,PML発症予測因子は,JCVに対する感受性遺伝子と,仮説1でのJCV特異的免疫能の減弱に関連した因子である.フィンゴリモド等の疾患修飾薬は,仮説1のJCVに対する免疫能の各因子に影響している. 以上の作業仮説を検証するために,以下1)から6)の研究プロジェクトを実施する.
1) 全ゲノム関連解析による検討.2) 標的となるJCV抗原の種類とエピトープの解析.3) JCV特異的T細胞の頻度及びJCV特異的T細胞の質的特徴の検討.4) 疾患修飾薬によるJCV特異的T細胞の体内動態への影響の検討.5) ウイルス側因子の検討.

次年度使用額が生じた理由

前述のHLA多型と抗JCV抗体の陽性率および抗体価の関連,フィンゴリモド使用との関連を解析した論文がまだ受理されたが,ないことから,コロナ蔓延に伴った受診控えなどもあり,ウイルス抗原エピトープを使った実験などの検体収集が遅れており,そのために,実際の実験で使う試薬などの購入が次年度になってしまったため.

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] HLA genotype-clinical phenotype correlations in multiple sclerosis and neuromyelitis optica spectrum disorders based on Japan MS/NMOSD Biobank data2021

    • 著者名/発表者名
      Watanabe M. Nakamura Y. Sato S. Niino M. Fukaura H. Tanaka M. Ochi H. et al
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 11 ページ: -

    • DOI

      10.1038/s41598-020-79833-7

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Two susceptible HLA-DRB1 alleles for multiple sclerosis differentially regulate anti-JC virus antibody serostatus along with fingolimod2020

    • 著者名/発表者名
      Watanabe Mitsuru、Nakamura Yuri、Isobe Noriko、Tanaka Masami、Sakoda Ayako、Hayashi Fumie、Kawano Yuji、Yamasaki Ryo、Matsushita Takuya、Kira Jun-ichi
    • 雑誌名

      Journal of Neuroinflammation

      巻: 17 ページ: -

    • DOI

      10.1186/s12974-020-01865-7

    • 査読あり / オープンアクセス

URL: 

公開日: 2021-12-27  

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