研究実績の概要 |
多発性硬化症(MS)は,疾患修飾薬により再発を減らすことが可能になったが,重大な副作用として長期使用に伴い潜伏感染しているJC virus (JCV)が起こす進行性多巣性白質脳症(PML)がある.特に日本人では欧米人の約10倍のPML発症がみられ,大きな問題になっている.本研究ではPML発症が多い理由の解明,PML発症リスク因子の同定と発症予測バイオマーカーの確立を目的とする.3年目は前年度から引き続き,標的となるJCV抗原の種類とエピトープの解析.JCV特異的T細胞の頻度及びJCV特異的T細胞の質的特徴の検討.疾患修飾薬によるJCV特異的T細胞の体内動態への影響の検討,を行った.具体的には,fingolimod使用中,未使用それぞれのMS患者の末梢血免疫細胞のフローサイトメトリーを行い,免疫細胞のサブポピュレーションと抗JCV抗体の関連をみてきた.さらに,標的となるJCV抗原の種類とエピトープの解析,JCV特異的T細胞の頻度及びJCV特異的T細胞の質的特徴の検討に関しても検体収集し,データを蓄積してきた.しかし,fingolimod使用中の患者の末梢血のリンパ球数が非常に少ないことが災いし,免疫細胞のサブポピュレーションの十分な解析が困難な例が多く,またJCV特異的T細胞の解析のための末梢血からのT細胞分離でも十分なT細胞の確保が難しかった,さらにJCV特異的T細胞頻度がもともと低いために,MHCテトラマーによるフローサイトメトリー法では特異的T細胞が検出できず,ELISPOTでも検出が非常に困難であった.そのため,結果的には年齢,HLAが抗体陽性率に関与していることがわかったが,T細胞の関与は十分には検討できなかった.
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