研究課題/領域番号 |
19K07998
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
藪内 健一 大分大学, 医学部, 助教 (10763807)
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研究分担者 |
松原 悦朗 大分大学, 医学部, 教授 (70219468)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Aβオリゴマー / アルツハイマー型認知症 / Aβオリゴマー抗体 / CDRペプチド / マイクロダイアリシス |
研究実績の概要 |
アルツハイマー型認知症(AD)に対する根治療法を目指し,申請者らは,ADの病態基盤分子であるAβオリゴマーのみを認識する抗体を独自に開発し,現在日本と欧州で実用化に向けた治験が展開されている.他方で抗体医薬品は,高価で中枢移行性が低いことが弱点である.こうした視点から,本研究はこの発明抗体を起点とし,より医療経済への負担が少なく,中枢移行性に優れた最小フラグメント化抗体による次世代の抗体医薬品の開発を企図した. 令和元年度には,最小フラグメント抗体が皮下投与および鼻腔内投与いずれにおいても血液脳関門を通過し,良好な中枢移行性を示すことをマイクロダイアリシス法を用いて明らかにした.また鼻腔内投与の方において,より高用量が脳内移行し,より長期間脳に留まることも明らかとした.これらの結果を受け,令和2年度は最小フラグメント抗体のより詳細な脳内局在を明らかにするため,フラグメント抗体をモデル動物の皮下ならびに鼻腔内投与し,投与後の異なるタイムポイントにおいて灌流固定し作成した脳スライスを用いた検討を行った.その結果,末梢投与された最小フラグメント抗体は,海馬や大脳皮質などを中心にびまん性に分布し,さらに神経細胞内に取り込まれることを見出した.驚くべきことに,これまでマイクロダイアリシス法(細胞外液中に回収された抗体を測定している)にて確認された薬物動態曲線より,長期間にわたり脳の神経細胞内に留まることがわかり,この抗体がAD病態に果たす本質的な薬効について大いに期待できる結果となった.令和2年度後半には,さらに上記結果によって最適化された最小フラグメント抗体の投与ルートと投与量を用い,ADモデルマウスへの長期投与を開始した.令和3年度上半期には行動実験が終了する予定であり,これらのマウスの脳スライスを用いた検討に入る予定としている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当大学動物センターが老朽化による全面改装のため,2019年11月より使用停止となった.これまで当研究室で自家繁殖により系統維持していた2種類の遺伝子改 変マウス(APP-NL-G-F-KI, APP-NL-F-KI )は,一時的に凍結胚として業者に保存を委託した.こうした事情から,in vivo実験に若干の遅れが出ているが,2021年6月より同センターが稼働開始となるため,本年度はようやくこの問題が解消される見込みである.
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今後の研究の推進方策 |
本年度前半には,昨年度後半からすでに開始しているモデル動物への最小フラグメント抗体の長期反復投与による記憶障害の改善効果を行動薬理学実験によって検証する.さらに本年度後半にかけて,行動実験に用いたモデル動物の脳内の変化を,生化学的,免疫組織化学的に検証し,この最小フラグメント抗体が持つ薬理作用の解明に挑む.
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次年度使用額が生じた理由 |
フラグメント抗体作成が比較的大量となったため,見積価格よりディスカウントが生じたことが主な理由となり,61,693円の余剰が生じたものである.それ以外はほぼ予定通りであった.繰越金は,引き続き試薬を中心とした物品購入に使用する予定としている.
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