研究実績の概要 |
2019年度は、各重症度(絞扼なし、2,4,6週間絞扼)の末梢神経慢性絞扼モデルを作成し、各絞扼期間にてフルオレセインを投与して絞扼部の蛍光血管造影を行い、解析ソフトにて絞扼部の蛍光輝度を定量化し、各重症度間で比較した。その結果、フルオレセイン投与による造影輝度は、絞扼週数が伸びるにつれて、すなわち慢性絞扼の重症度が強くなるにつれて有意な相関をもって低下していた。2020年度は、同モデルを用いて、各絞扼期間で運動(Walking track analysis)・知覚(Hargreaves test)機能評価、電気生理学的検査(腓腹筋複合活動電位)を行った。機能評価では4週・6週絞扼群で絞扼なし群に比して知覚機能が低下し、電気生理学的検査でも腓腹筋の遠位潜時が延長していることを確認した。2021年度は病変部の坐骨神経を採取し軸索変性・線維化の程度をトルイジンブルー染色ならびにマッソントリクローム染色を用いて、投与したフルオレセインの末梢神経における分布を抗フルオレセイン抗体による免疫染色を用いて定量評価し、先に記録した蛍光造影データや機能評価データとの関連を調べた。抗フルオレセイン抗体による免疫染色では2週絞扼群、4週絞扼群、6週絞扼群でも神経外膜と神経外膜内の血管、神経内膜毛細血管が染色されていたが、control群と比較して、4週絞扼群と6週絞扼群で有意に抗体陽性面積が低下していた。トルイジンブルー染色の光学顕微鏡所見と電子顕微鏡所見では、絞扼週数が伸びるにつれて神経の外縁で髄鞘の菲薄化を認めた。マッソントリクローム染色では、絞扼週数が長くなるに連れて、神経上膜は次第に肥厚し組織学的評価では、絞扼期間が長くなるにつれて有意に線維化面積が増加し、それに伴ってフルオレセインの分布面積は有意に低下していた。
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