研究課題
パーキンソン病(PD)と多系統萎縮症(MSA)は共に神経細胞へのαシヌクレイン異常凝集を特徴とする。PDではαシヌクレイン病理が消化管神経叢から迷走神経を通じて脳へと進展することから発症には腸内細菌叢が関与することが世界的にも多く報告されている。一方、MSAもまた自律神経障害が必発で消化管疾患として便秘を高頻度に合併する。しかし腸内細菌叢に関する研究は世界的にも極めて少ない。本研究はMSAで腸内細菌叢の組成分析と臨床経過との関連性を検討し病態の解明及び進行抑制療法の開発を最終目標とする。2019年度からMSA患者を登録開始、年齢、性別などの臨床情報を取得し、unified MSA rating scaleを用いて臨床重症度を評価した。パーキンソン優位型と運動失調優位型の区別をした。また健常対照として食生活が共有されている配偶者あるいはその他の同居親族を登録した。2019年度は10組、2020年度は5組のMSA症例とその配偶者に同意を得て登録することができた。自宅で採便し検体は直接、分析担当者に被験者から郵送した。最終の2021年度は次世代シークエンサーを用いた16S解析を行い、Qiime2を用いて菌組成を解析した。予測メタゲノム解析にはPICRUSt1.1.2やPiphillin serverなどを用いて行い、対照と比較することで組成の違いを明らかにした。また症例登録の進捗遅れに対応して登録期間を2021年末まで延長し3例追加登録した。18組を対象に解析を同時進行で行い、MSA12例の結果を得ることができた。PDで認められるAkkernansiaの増加とSCFA産生菌の低下はMSAでは認められず、他国からの既報とは異なる成果が得られた。αシヌクレイノパチー内で発症病態が異なる可能性や人種などにより異なる可能性など興味深い結果を得ることができた。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)
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