研究課題/領域番号 |
19K08002
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
高橋 慎一 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任教授 (20236285)
|
研究分担者 |
森本 悟 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任助教 (00816952)
馬島 恭子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (30812440)
岡野 栄之 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (60160694)
伊澤 良兼 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (90468471)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | ヒトiPS細胞 / 脊髄運動ニューロン / アストロサイト / 代謝コンパートメント / 14Cグルコース / ペントースリン酸経路 |
研究実績の概要 |
本課題の初年度には、ヒト(健常者)iPS細胞由来の脊髄運動ニューロンとアストロサイトを誘導し、これまでげっ歯類(ラットおよびマウス)の初代培養細胞を用いて積み重ねてきた両者のグルコース代謝コンパートメントの特性が再現できるかどうかについて基礎データの収集を行った。特にヒト(健常者)由来のニューロンとアストロサイトにおいて、グルコース代謝には明瞭な差が認められ、アストロサイトでは解糖系活性が高く、ミトコンドリアによる酸化的代謝は低く抑えられていた。これに比してニューロンにおいては酸化的代謝活性がアストロサイトに比して約2倍程度高く、結果としてペントースリン酸経路(PPP)へのfluxは、アストロサイトにおいてニューロンの2~3倍程度高かった。このことは、従来から議論されているニューロンとアストロサイトの代謝特性が、ヒトとげっ歯類では大きく異なる可能性については否定的結果であった。すなわちアストロサイトの有する抗酸化ストレス機能は、ヒトのおいても同様に保持され、その障害がニューロンの変性を惹起する原因となる得る可能性を示唆した。虚血再灌流障害は、脳梗塞における早期再灌流療法に伴うニューロン障害を起こし、脳梗塞の予後を決定する重要な因子である。また多くの神経変性疾患においても酸化ストレスは広く共通の病因と認識されている。既に、疾患特異的ヒトiPS細胞の樹立に成功しており、今後は健常者由来のiPS細胞、並びに神経変性疾患のうち筋委縮性側索硬化症(ALS)患者由来のiPS細胞からニューロンとアストロサイトを誘導し、代謝特性の検討を始めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度にはニューロンとアストロサイトのグルコース代謝特性の指標となる、解糖系ならびにTCA回路における酸化的代謝活性を14Cグルコースを用いて測定し、特に抗酸化ストレス作用に基づく細胞保護的機能の指標であるペントースリン酸経路(PPP)活性を実測し、これまでげっ歯類で積み重ねてきたデータを矛盾のないことを確認した。疾患モデルとしての虚血再灌流障害、神経変性疾患としてのALS患者由来のiPS細胞由来のニューロンとアストロサイトの樹立に成功しており、グルコース代謝の測定を開始している。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、ミクログリアの誘導を進め、そのPPP活性測定を進める。さらに低酸素チャンバーを用いたin vitro脳虚血モデルにおけるニューロン、アストログリア、ミクログリアのPPP活性変化を比較検討する。さらにミクログリアの活性化に伴い生じると予想されるアストロサイトのPPP活性亢進を共培養系を用いて確認する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の学内の異動に伴い、研究着手に遅延が生じたが、7月以降には研究スピードを上げ、計画に対する遅延が解消している。消耗品の発注が遅れたため予算執行は初年度から第2年度にずれ込んだが、次年度には予定どおり消耗品費として使用する。
|