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2020 年度 実施状況報告書

大規模ゲノムリソースを利用したドーパミン神経変性疾患の分子メカニズム解明

研究課題

研究課題/領域番号 19K08003
研究機関順天堂大学

研究代表者

舩山 学  順天堂大学, 医学部, 先任准教授 (70468578)

研究分担者 斉木 臣二  順天堂大学, 医学部, 准教授 (00339996)
村上 晶  順天堂大学, 医学部, 教授 (90157743)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードパーキンソン病 / 網膜色素変性症 / ドーパミン / 神経細胞変性 / 次世代シーケンサー / オートファジー
研究実績の概要

パーキンソン病 (Parkinson’s disease: PD) は中脳黒質のドーパミン神経細胞が変性することで発症するが最近、PD患者は健常対照者に比べ網膜の厚みが減少し、その程度はPDの重症度と相関すること、さらに網膜において脳で観察されたLewy小体と同様にリン酸化αシヌクレインの蓄積が認められ、蓄積の進行度は脳内と網膜で強い正の相関が認められることなどが報告されている。一方網膜の細胞は少なくとも一種類のドーパミン受容体を発現し他臓器に比べドーパミン濃度が高いことが知られている。この脳と眼の変性における共通分子を同定することが本研究の目的である。PDと網膜色素変性症 (Retinitis pigmentosa: RP) を合併する多発家系6家系について昨年度に引き続きエクソームシーケンス解析を実施した。昨年度までに各家系から数百種類の候補バリアントを同定しており、OMIM (online mendelian inheritance in man) データベースのキーワード検索によりPDまたはRPに関連する1142種類の遺伝子を抽出し、この遺伝子の中に候補バリアントが該当するか検索した結果、12~33種類のバリアントに絞り込むことに成功した。これらの候補バリアントについて遺伝子産物におけるアミノ酸変化の影響を予測するオンラインツールを用いて詳細に解析した結果、0~10種類の候補バリアントに絞り込んだ。しかしながら2~6家系に共通する候補バリアントは無く、解析した6家系はそれぞれ別の原因遺伝子が存在することが示唆された。この中で解析した1家系については候補バリアントを1種類まで同定することに成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の目的であるPDとRPの共通原因遺伝子を見出すという点において、6家系中1家系について原因となる候補バリアントを1種類まで絞りこむことに成功した。この遺伝子は細胞内タンパク質分解機構のひとつであるオートファジーにおける重要な分子であることがわかっている。しなしながら本研究対象の残りの5家系にはこの遺伝子に変異は同定されていないため、最終的に原因と断定できなかった。また非常に稀であるがアジア人が同じレアバリアントをもっていることがデータベース検索により明らかになった。そこでこのレアバリアントが疾患原因となるか否かを明らかにする目的で、優性遺伝性PDバンク約450家系についてこの遺伝子のシーケンス解析を実施した結果、新たに6家系の優性遺伝性PDからアミノ酸置換をともなうレアバリアントを見出した。このうち3種類はこれまで報告されていない新規レアバリアントであり、4種類はアミノ酸置換予測オンラインツールで病的と判定された。この遺伝子にレアバリアントをもつPDはほとんどが50歳以下発症であり、この遺伝子は若年発症優性遺伝性PDの新規原因遺伝子である可能性が高いことが明らかになった。

今後の研究の推進方策

今年度の研究成果により、PDとRPを合併する家系の原因遺伝子を1種類単離することに成功し、この遺伝子が若年発症優性遺伝性PDの新規原因遺伝子であることを明らかにした。今後孤発性PDの発症感受性遺伝子となり得るかを検証する。一方RPについては分担研究者と共同して遺伝性眼疾患のゲノムバンクから症例を抽出しシーケンス解析を実施し、この遺伝子がRPの原因となり得るか検討する。すでに同定されたレアバリアントについて、細胞モデルを用いてオートファジーに影響するか否かを共同研究として実施する予定で、すでに共同研究先との打ち合わせが完了している。iPS細胞に関しては今年度レアバリアントを同定した6症例のうち、来年度細胞モデルを用いた病態生理解析で表現型が確認された症例についてインフォームド・コンセントを得たのち採血しiPS細胞を樹立する予定である。

次年度使用額が生じた理由

COVID-19感染拡大により4月-6月は在宅勤務となり、ウエット実験が実施できなかったため。国際会議がオンラインとなり計画していた海外出張が中止となったため。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] PLA2G6 variants associated with the number of affected alleles in Parkinson’s disease in Japan2021

    • 著者名/発表者名
      Daida Kensuke、Nishioka Kenya、Li Yuanzhe、Yoshino Hiroyo、Shimada Tomoyo、Dougu Nobuhiro、et al.
    • 雑誌名

      Neurobiology of Aging

      巻: 97 ページ: 147.e1~147.e9

    • DOI

      10.1016/j.neurobiolaging.2020.07.004

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Clinical manifestations of Parkinson's disease harboring VPS35 retromer complex component p.D620N with long-term follow-up2021

    • 著者名/発表者名
      Ishiguro Mayu、Li Yuanzhe、Yoshino Hiroyo、Daida Kensuke、Ishiguro Yuta、Oyama Genko、Saiki Shinji、Funayama Manabu、Hattori Nobutaka、Nishioka Kenya
    • 雑誌名

      Parkinsonism & Related Disorders

      巻: 84 ページ: 139~143

    • DOI

      10.1016/j.parkreldis.2021.02.014

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The identified clinical features of Parkinson's disease in homo-, heterozygous and digenic variants of PINK12021

    • 著者名/発表者名
      Hayashida Arisa、Li Yuanzhe、Yoshino Hiroyo、Daida Kensuke、Ikeda Aya、et al.
    • 雑誌名

      Neurobiology of Aging

      巻: 97 ページ: 146.e1~146.e13

    • DOI

      10.1016/j.neurobiolaging.2020.06.017

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Shared Metabolic Profile of Caffeine in Parkinsonian Disorders2020

    • 著者名/発表者名
      Takeshige‐Amano Haruka、Saiki Shinji、Fujimaki Motoki、Ueno Shin‐Ichi、Li Yuanzhe、Hatano Taku、Ishikawa Kei‐Ichi、Oji Yutaka、Mori Akio、Okuzumi Ayami、Tsunemi Taiji、Daida Kensuke、Ishiguro Yuta、Imamichi Yoko、Nanmo Hisayoshi、Nojiri Shuko、Funayama Manabu、Hattori Nobutaka
    • 雑誌名

      Movement Disorders

      巻: 35 ページ: 1438~1447

    • DOI

      10.1002/mds.28068

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Identifying Therapeutic Agents for Amelioration of Mitochondrial Clearance Disorder in Neurons of Familial Parkinson Disease2020

    • 著者名/発表者名
      Yamaguchi Akihiro、Ishikawa Kei-ichi、Inoshita Tsuyoshi、Shiba-Fukushima Kahori、Saiki Shinji、Hatano Taku、Mori Akio、Oji Yutaka、Okuzumi Ayami、Li Yuanzhe、Funayama Manabu、Imai Yuzuru、Hattori Nobutaka、Akamatsu Wado
    • 雑誌名

      Stem Cell Reports

      巻: 14 ページ: 1060~1075

    • DOI

      10.1016/j.stemcr.2020.04.011

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Identification of Disease-Associated Variants by Targeted Gene Panel Resequencing in Parkinson's Disease2020

    • 著者名/発表者名
      Daida Kensuke、Funayama Manabu、Li Yuanzhe、Yoshino Hiroyo、Hayashida Arisa、Ikeda Aya、Ogaki Kotaro、Nishioka Kenya、Hattori Nobutaka
    • 雑誌名

      Frontiers in Neurology

      巻: 11 ページ: 576465~576465

    • DOI

      10.3389/fneur.2020.576465

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Mitochondrial UQCRC1 mutations cause autosomal dominant parkinsonism with polyneuropathy2020

    • 著者名/発表者名
      Lin Chin-Hsien、Tsai Pei-I、Lin Han-Yi、Hattori Nobutaka、Funayama Manabu、Jeon Beomseok、et al.
    • 雑誌名

      Brain

      巻: 143 ページ: 3352~3373

    • DOI

      10.1093/brain/awaa279

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] Analysis of genetic testing for spinocerebellar ataxia2020

    • 著者名/発表者名
      櫻井麻由、土屋浩二、吉野浩代、舩山 学、田部陽子、西岡健弥、服部信孝
    • 学会等名
      第61回日本神経学会学術大会
  • [学会発表] Next-generation sequencing expand the possibilities to detect more variants in Parkinson's disease2020

    • 著者名/発表者名
      李 元哲、吉野浩代、舩山 学、戸田達史、西岡健弥、服部信孝
    • 学会等名
      第61回日本神経学会学術大会
  • [学会発表] PINK1 heterozygote変異はalpha-synucleinopathyに部分的に関与する2020

    • 著者名/発表者名
      西岡健弥、李 元哲、林田有紗、代田健祐、池田 彩、大垣光太郎、吉野浩代、舩山 学、服部信孝
    • 学会等名
      第61回日本神経学会学術大会
  • [学会発表] Identifying a novel causative gene associated with familial Parkinson's disease2020

    • 著者名/発表者名
      代田健祐、舩山 学、李 元哲、吉野浩代、林田有紗、池田 彩、大垣光太郎、西岡健弥、服部信孝
    • 学会等名
      第61回日本神経学会学術大会
  • [学会発表] Mutational and functional analysis of the CHCHD2 gene in amyotrophic lateral sclerosis2020

    • 著者名/発表者名
      池田 彩、舩山 学、吉田眞理、李 元哲、饗場郁子、齋藤由扶子、熱田直樹、中村亮一、藤内玄規、曽根 淳、和泉唯信、梶 龍兒、森田光哉、谷口 彰、祖父江 元、服部信孝、JaCALS
    • 学会等名
      第61回日本神経学会学術大会

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公開日: 2021-12-27  

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