パーキンソン病 (PD) は中脳黒質のドーパミン神経細胞が変性することで発症するが、最近、PD患者は網膜にも異常が観察されることが明らかになってきた。本研究ではPDと網膜色素変性症を合併する家系に端を発し、ドーパミン神経変性共通の分子機構を明らかにする目的でゲノム解析を実施した。 今年度、PDと網膜色素変性症を合併する兄弟発症例2例から発見した候補バリアントの存在する遺伝子のコード領域およびスプライス部位についてサンガー法で配列解析を実施した。対象は顕性遺伝性PD467家系、孤発性PD513症例、遺伝性眼疾患患者67症例である。その結果、この遺伝子に病的と考えられるレアバリアントを顕性遺伝子PDから3家系、孤発性PDから17症例、遺伝性眼疾患から0症例検出した。臨床神経学的検討の結果、レアバリアントを持つ症例はほぼ共通して発症年齢が50歳以下の若年性PDであること、臨床的には通常のPDと大きな違いは無いことが明らかになった。顕性遺伝性PDから新たに発見された3家系に関しては家族内PD発症者からの検体採取が困難なため、共分離解析は実施できなかったため、共分離が確認されたのは発端家系の兄弟発症例のみであった。兄弟発症例のうち1例についてはMIBGシンチグラフィー検査で取り込み低下を認め、レビー小体などαシヌクレインの蓄積が疑われた。 この遺伝子はオートファジーの重要な分子であることは明らかになっており、液-液相分離異常やミトコンドリアクリアランス異常、αシヌクレインの蓄積異常などをモデル細胞やモデル動物を作製して解析する予定であるが、現在のところ病的な表現型は観察されていない。
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