研究実績の概要 |
慢性不眠症患者46名の白質病変容積を、Lesion growth algorithm(LGA)およびLesion prediction algorithm(LPA)を用いて算出した。なお、LGAはT1強調画像を用いて、LPAはFLAIR画像を用い、LGAの閾値は0.35として解析を行った。不眠重症度をISI(Insomnia severity index)を用いて評価し、LGAおよびLPAとの相関を求めたところ、有意な相関関係を認めた。不眠症患者のうち、閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)を併存しているものを分けて解析を行ったところ、不眠症群(LogLPA:r= 0.258,p=0.193、LogLGA:r= 0.425,p=0.038)および併存群(LogLPA:r= 0.514,p=0.024、LogLGA:r= 0.537,p=0.022)の両群で有意な正の相関を認め、併存群の方が相関関係がより強く示された。 これらの結果から、不眠症状の病態に白質病変の影響は強く認められ、白質病変の出現・悪化に関連する虚血性変化のリスク因子(OSA)を有する場合、不眠症状の器質基盤が強化されることが推察された。不眠症の準備因子として、不安傾向や神経症的パーソナリティが報告されているが、白質病変は準備因子とは独立した、遷延因子として病態に関与する可能性を示唆する結果と考えられる。不眠症の発症・増悪を脳死するためには、OSAのみならず、高血圧症や糖尿病等の、虚血性変化を促進し得る疾患の発症・増悪を予防する医学的介入の重要性が示唆された。
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