研究課題
電気けいれん療法(ECT; electroconvulsive therapy)は、薬物抵抗性・難治性の精神疾患に有効な身体療法であるが、その効果発現メカニズムは未解明である。そのメカニズム解明をグリア血管複合体の観点から試みた。うつ病様の症状モデル動物として既に確立されているGunnラットにおける異常活性化アストロサイトは、脳血管周囲の終足部で十分な形態発現をしておらず、アストロサイトと脳血管内皮細胞から構成されるグリア血管複合体の形成異常を呈するが、ECTによってグリア血管複合体の形成異常が是正されることことを免疫組織化学的手法で明らかにした。具体的には、Gunnラットの前頭葉、海馬では、AQP(aquaporin)4に免疫反応を示すアストロサイト終足による脳血管被覆率が有意に低下していたが、GunnラットにECTを施行すると、強制水泳試験、Y字迷路試験にて、Gunnラットのうつ病様異常行動の改善に伴い、脳血管被覆率が正常コントロールのWistarラットとほぼ同じレベルにまで増加することが明らかになった。以上より、ECTの効果発現メカニズムとして血管複合体の形成異常の是正が介在している可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
今年度は上記の通り、GunnラットにECTを施行し、うつ病様の異常行動の改善と、グリア血管複合体の形成異常是正との間に相関性があることを証明できた。
次年度以降は、グリア血管複合体の血液脳関門としての重要な機能を担っている水イオンチャネルであるAQP4発現レベルや脳血管内皮細胞におけるタイトジャンクション因子claudin-5の発現レベルが、ECTによってどう変化するかを検討していく。
印刷費30千円を計上していたが、今年度は印刷物が当初計画より少なく、8,019円の差額が生じた。これは来年度以降の印刷費として使用する。
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Journal of Affective Disorders
巻: 257 ページ: 331~339
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